カーボンゼロ、クルマの未来はどうなる?(78)

トヨタのEV販売や次世代車の投入が米国で本格的に始まるのは25年以降になる。テスラですらEVの生産が2万台の規模から22年に100万台超に増やすまでには9年かかった。現地でもトヨタのEV生産は開始が25年と競合より3年以上遅れている上、テスラが割いた期間の半分で軌道に乗せる必要がある。 

新体制の方針を説明するトヨタ自動車の佐藤恒治社長(7日午後、東京都千代田区     

 

トヨタは1997年に投入したハイブリッド車(HV)「プリウス」で「環境に優しいブランド」として一時代を築いた。ただそうした視点でみられる車種は今やEVに移りつつある。トヨタHV燃料電池車(FCV)、次世代の水素エンジン車にも力を入れる「全方位戦略」は変えないが、EV戦略の加速は全方位を維持する上でも欠かせない。 

 

トヨタの佐藤恒治社長は7日の記者会見で「BEV(バッテリー電気自動車)に対する具体的なファクトをお示しすることが十分にできていなかったのかなと反省している。これまで取り組んできたことも含めて今日説明した」と強調。今後はEVのインフラ構築などが課題になる。 

 

トヨタなど自動車大手がEVにシフトすることで、国内の自動車産業は構造変化を迫られる。EVは部品点数がガソリン車の約3万点から3〜4割減るといわれる。エンジン部品が代表的だ。 

 

アーサー・ディ・リトル・ジャパンによると、9割がEVに移行した場合、68万人の自動車部品に関連する雇用のうち、1割強にあたる8万人が職を失うと試算する。単体で7万人、連結で37万人を抱えるトヨタの従業員を維持することは簡単ではない。 

 

一方で新たに需要が膨らみそうなのはソフトウエア関連だ。米マッキンゼー・アンド・カンパニーは、自動車業界における慢性的な人手不足を指摘している。必要な人材は、30年までの10年で3〜4倍に増加すると試算している。 

 

トヨタもこの日の説明会で「アリーン」と呼ぶ、次世代車の安全制御機能などを一括で動かす車載用の基盤ソフトについて触れた。いかに従来の部品生産を担っていた雇用をソフト人材などに転換できるか。日本の製造業出荷額の2割にあたる自動車産業は、大きな変革期を迎えている。 

 

(矢尾隆行、野口和弘、松浦龍夫) 

 

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOFD05BL20V00C23A4000000/ 

 

 

 

トヨタ佐藤社長「EV有用性理解」「豊田会長役割大きい」 

新体制方針説明会タイムライン 

 

自動車・機械2023年4月7日 13:45 (2023年4月7日 15:48更新) [有料会員限定] 

 

新体制の方針を説明するトヨタ自動車の佐藤恒治社長(7日午後、東京都千代田区    

 

トヨタ自動車は7日午後1時半から新体制方針説明会を開いた。1日付で社長に就任した佐藤恒治氏のほか、副社長の中嶋裕樹氏宮崎洋一氏らが出席した。電気自動車(EV)への移行が想定以上のペースで進む中、「EVファースト」を掲げる佐藤新社長が経営戦略を語った。日経電子版では佐藤氏らの発言をタイムライン形式でまとめた。 

 

【午後3時6分】記者会見が終了した。 

 

【午後3時2分】佐藤氏「クルマの未来かえていく」 

 

佐藤氏は「私から一番伝えたいのは『クルマの未来を変えていこう』という強い意志だ」と語った。モビリティーカンパニーへの変革について「正解があるわけではないが、自分たちで汗をかきながら挑戦していく」と力を込めた。 

 

記念写真に納まるトヨタの佐藤社長㊥ら(7日午後、東京都千代田区 

 

【午後2時51分】佐藤氏、他社との連携では「豊田会長の役割大きい」 

 

他社との連携について問われた佐藤社長は、「仲間づくりという観点では豊田(章男)会長の役割が大きい」と指摘。豊田会長ならではの人脈や行動力があるとして、リーダーシップに期待を寄せた。 

 

【午後2時44分】「EVの有用性も理解。ファクト示せず反省」 

 

トヨタの全方位戦略について質問が出た。佐藤氏は「エネルギー変換効率を考えた時、EVの有用性も理解している」と述べ、EV開発にも積極的に取り組んでいると強調した。一方、「(これまで)どうしてもEVに対する具体的なファクトをお示しすることが十分にできていなかったのかなと反省しており、取り組んできたことも含めて説明した」と話した。欧州連合EU)が合成燃料「e-fuel」の利用に限りエンジン車の新車販売を認めることについては、「今の産業構造を踏まえた現実的な提案だ。製造プロセスには課題も多いため、さらなる技術開発が必要になる」と考えを示した。 

(続く)