カーボンゼロ、クルマの未来はどうなる?(82)

  会社側が反対していた株主提案が否決されたことなどで同社の主張に対して株主から一定の支持を得ていることが示唆される格好となった。取締役選任議案や株主提案への賛成・反対比率の詳細は15日に開示される予定となっており、どれだけ多くの株主から支持が得られたのかが注目される。 

 

  今回焦点となっていたのは豊田氏の取締役選任と気候変動に関する渉外活動の効果などについて充実した開示を求める株主提案で、議決権行使について助言を行う大手2社の判断は割れていた。 

 

  議決権行使助言会社米グラスルイスはリポートで、トヨタの取締役会は十分な数の社外取締役がおらず、客観性や独立性、適切な監督能力について重大な懸念があると指摘。責任は取締役会議長である豊田氏が負うべきで、株主は取締役選任に反対票を投じることで同問題に対する懸念を表明するよう推奨した。米インスティテューショナル・シェアホルダー・サービシーズ(ISS)は豊田氏の選任について賛成を推奨していた。 

 

  豊田会長の取締役選任については、米国最大の公的年金基金であるカリフォルニア州公務員退職年金基金カルパースも反対を表明していた。カルパースは佐藤社長の選任についても反対を示していた。 

 

涙ぐむ場面も 

 

  電気自動車(EV)に後ろ向きとの根強い見方があるトヨタに対しては環境団体からの批判が続いている。グリーンピース株主総会開始前からトヨタの本社前で「トヨタさん、2030年までにガソリン車からEVへシフトしましょう」と書かれたメッセージを掲げ、昨年に続きEVへの早期転換を訴えていた 

 

  総会ではトヨタのEV戦略や実験都市「ウーブン・シティ」などさまざまなことについて株主から質問がされた。同社幹部らはEVについては取り組みを加速していることなどを紹介した一方、ハイブリッド車を含め全方位で開発を進める戦略は今後も維持する考えを改めて示した。 

 

  EV販売で先行する米テスラに太刀打ちできるのかを問う株主に対しては、総会の議長を務めた豊田会長が、テスラに勝てるかは分からないが、同社が今後投入するEVに期待をしてほしいとコメントした。 

 

  長年務めた社長の座を佐藤恒治氏に譲り、4月に会長となった豊田氏をねぎらう声も株主からは上がり、社長を務めた約14年間の苦労などを思い起こした豊田氏が涙ぐむ場面が何度かあった。また、社長の内示を受けた際に豊田氏からかけられた温かい言葉を紹介した佐藤氏も涙で言葉を詰まらせる場面があった。 

 

  今回の総会に向けてはグラスルイスはトヨタが新たに独立取締役として選んだ三井住友銀行の大島真彦副会長について、選任案には賛成を推奨したものの両社が取引関係にあり、株式の持ち合いも行っていることから、「関連」取締役と分類した。ISSは大島氏ら3人の社外取締役候補について同様の分類をしたが、賛成を推奨した。 

 

  トヨタ側は、東京証券取引所の基準である3分の1の独立役員の基準は満たしており、新任取締役の独立性についても東証から承認を得たとしていた。 

 

  もう1つ注目を集めていたのが、欧州の機関投資家らによる株主提案だ。オランダの年金運用大手APGアセット・マネジメントなど3社は気候変動に関する渉外活動の効果などについて充実した開示を求めるため定款に規定を追加する内容の株主提案を行った。トヨタの取締役会は5月、同提案に対し反対することを表明していた。 

 

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トヨタ取締役会、欧機関投資家3社の気候変動関連の株主提案に反対 

 

(株価情報を追加して更新します) 

 

https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2023-06-13/RVYMWPDWX2PS01 

 

 

以上のように、トヨタ株主総会は無事終了した訳だが、豊田章男氏の取締役選任が議論の対象となってしまったことは、トヨタとしてもまことに由々しき問題だと認識しておく必要がある。 

 

しかも取締役選任に疑問を持つ株主も、それなりにいたようだ。 

賛成率は84,57%と2022年の95.58%から、11ポイントも低下している。 

 

また、株主提案は賛成率15.06%で否決されたが、賛成票を投じた株主もそれなりにいたわけだ。出席株主の2/3以上の賛成が必要なので、おいそれと可決されることはないのだが、環境問題が主要なテーマとなっていることの証左である。 

 

 

トヨタ会長「再任賛成率の急落」にみる株主の変容 総会での賛成率が2022年から11ポイント低下 

緒方 欽一 : 東洋経済 記者   2023/06/16 5:00 

議決権行使助言会社豊田章男会長の取締役再任に反対推奨した今年の株主総会は、例年にないほど「結果」が注目された(左写真は尾形文繁、右写真は編集部がそれぞれ撮影)      

 

「私が大きな流れに逆らいながらも前に進むことができたのは、中長期的な視点でずっとトヨタを支えてくれた株主さまのおかげだったと思う」「(新体制では)うまくいかないことのほうが多いと思うが、どうか挑戦を長い目で見ていただき、支援をいただきますようお願い申し上げます」 

 

【写真】豊田会長の取締役再任に「AGAINST」(反対)と推奨したグラスルイスのリポート 

 

6月14日に開かれたトヨタ自動車の定時株主総会豊田章男会長が社長を務めた14年を涙ながらに振り返り、佐藤恒治社長率いる新体制への支援を求めると、株主からひときわ大きな拍手が送られた。 

 

今年のトヨタの総会は、例年にないほど注目された。理由の1つは、アメリカの議決権行使助言会社グラスルイスが、豊田会長の取締役再任に反対するよう機関投資家などの株主に推奨したことにある。 

 

翌15日に開示された臨時報告書によると、豊田会長の取締役再任への賛成率は84.57%。再任が危うくなるような賛成率ではないが、95.58%だった2022年からは11ポイント低下した。 

 


豊田会長の取締役再任に対する賛成率
     

 

議決権行使結果の開示が始まった2010年以降、賛成率は93%を下回ったことがなかっただけに「反対推奨」は一定の影響があったと思われる。 

(続く)