ALPS処理水放出と習近平の凋落(57)

中国経済は「中国経済光明論」の下で、崩壊してゆくのであろう、とこの論考は結んでいる。 

 

何となれば、経済政策とは何の関係もない「中央宣伝部」「国家統計局」「国家安全部」が、中国経済を司ることになったからである。 

 

と言うことは、真っ当な経済政策に関する提言は、場合によっては、「中国の特色ある社会主義体制を攻撃し続けることにある」として、国家安全部としては今後、こうした論調を「国家の経済安全を危害するもの」として徹底的に排除されてゆくことになるのであろう。怖いことである。 

 

今一度この論考の後段部分を読み返してほしいのだが、次の論考は中国経済の衰退を事実に基づいて物語っているもので、更に生々しいものである。 

 

 

 

中国経済の「不都合な真実」を伝えると取り締まり対象に…!? それでももう公式統計に基づく報道はやめるべきではないか 

朝香 豊経済評論家  2023.12.30 

 

中国経済は良いのか、悪いのか 

 

最近の中国経済に関する報道はネガティブなものが多い。 

 

7~9月期に外資の直接投資が初めてマイナスに転じたのみならず、その金額はマイナス118億ドルと巨額だった。2023年は中国の株式・債券市場から海外への資金流出が、円換算で12兆円規模となる見通しで、アジアの新興国の中で一人負けの様相を呈していることも報じられた。 

 

輸出入について見てみても、前年同月比で7月に輸出額が14.5%減、輸入が12.4%減と、ともに2桁水準で減少するなど、年間を通じて貿易量が落ち込んでいる 

 

Gettyimages     

 

ところが、こういう状況にあっても、「経済のプロ」と思われるところから、中国経済は今なお力強いと語られるという、実に不思議な現象も起こっている。 

 

例えば、IMFは11月7日に、中国のGDP成長率予想を、コロナ危機後の力強い回復を理由として、10月段階で示した5.0%から5.4%へと、大幅に引き上げた。IMFは2024年の中国経済の見通しについても、従来の4.2%成長から4.6%成長へと、大きく引き上げた。 

 

こうした報道に出会うと、「世間で言われているほど、実際の中国経済は悪くないのではないか」などと思ってしまう読者も多いだろうが、実はそのカラクリは単純だ。「経済のプロ」たちは、中国政府が発表する公式統計を疑うことを許されていないからだ。 

 

公的な統計を重視するのは、個人の勝手な思い過ごしの暴走を許さないという点では、意味のあることだと私も思う。しかしながら、中国政府のように、情報ソースが明らかに信用できない場合には、この捉え方を修正する勇気を持つべきではないだろうか。 

 

内需が力強く回復している」は大噓 

 

たとえば中国のGDP統計では、飲食・宿泊業は2023年1~3月期に前年同期比で13.6%成長、4~6月期に17.5%成長、7~9月期に12.7%成長したことになっている。単純に算術平均を取れば、この分野では1~9月平均で14.6%という力強い成長を実現したということになる。 

 

この例に示されるように、中国経済は力強い内需、特に個人消費の回復が支えていることに、公式統計上はなっているのだ。 

 

ところが、2023年の1月から10月で、中国国内で倒産・閉店に追い込まれた飲食店は105万6000店に達している。前年同期は53万8000件だから、1年前に比して倒産・閉店に追い込まれた飲食店数ほぼ倍増したことになる。この分野で年率14.6%という大きな成長があったとすれば、こんなことは間違いなく起こっていないだろう。 

 

苦境が伝えられるのは飲食店ばかりではない。生活必需品と密接なつながりがあり、不況期であっても強さを発揮するスーパーマーケットにおいてさえ、異変が広がっている。 

 

Gettyimages© 現代ビジネス    

 

(続く)