ALPS処理水放出と習近平の凋落(58)

例えば、中国カルフールは今年上半期だけで106店舗が閉店し、6月末で営業している店舗数は41になった。昨年末の段階で営業していた店舗のうち7割以上が今年前半だけで閉店したのである。ちなみに中国カルフールは今や完全に中国資本になっていて、その経営のまずさも影響している。だとしても、尋常ではない事態が起こっているのは、容易に理解できるだろう。 

 

中国を代表するスーパーマーケットの永輝超市の、今年1月から9月の売上を見ても、前年同期比12.4%減少している。ちなみに永輝超市は、2021年には39.44億元の損失、2022年に27.63億元の損失を計上していて、実に苦しい経営が続いている。今年の売上も大きく下がっていることから、今年度の決算もかなり厳しいことが予想される。 

 

 

また、中堅のディスカウント型スーパーマーケット比宜徳超市についても、12月22日で全店を閉鎖したことが報じられた。

 

 

中国を代表する家電量販店といえば、中国カルフールを買収した蘇寧に加えて、もう一社、国美というところがある。日本の企業で例えれば、ヤマダ電機ヨドバシカメラに相当するのが、蘇寧と国美だ。 

 

この2強の一方のはずの国美の状況も、実はカルフール並みに悲惨な状態だ。2021年段階では3万2000人の従業員がいたはずだが、今年の6月段階では3609人しか残っておらず9割近い従業員が流出している。それどころか、国美は注文した商品を届けることをせず、返金もしないとして、今や集団訴訟に直面している有り様だ。 

 

ちなみにもう一方の雄の蘇寧も、今年1月から9月の売上が前年同期比12.4%減少している。これで中国の内需が力強く回復しているなんてことは、当然、ありえない。 

 

ダニエル・ローゼン氏の寄稿記事 

 

そもそも強い内需とは明らかに矛盾したデフレ傾向が中国国内で進行していることもよく指摘される。世界的にインフレ傾向にある中で、中国だけが全く違った動きになっているのだ。 

 

消費者物価指数は10月が前年同月比でマイナス0.2%、11月が前年同月比でマイナス0.5%となった。卸売物価指数は14ヵ月連続のマイナスで、11月はマイナス3.0%となった。これはどう見ても、中国国内の需要が弱く、原材料価格の上昇があっても、その価格転嫁ができない経済状態にあることを示している。 

 

中国経済ウォッチャーは、中国の公式統計を疑って真のGDPがどうなっているかを推計する動きに移るべきではないか。 

 

中国経済の「不都合な真実」を伝えると取り締まり対象に…!? それでももう公式統計に基づく報道はやめるべきではないか      

 

この点で注目すべき記事が、ウォール・ストリート・ジャーナルに掲載された。米調査会社「ロジウム・グループ」の共同創業者であるダニエル・ローゼン氏の寄稿記事である。 

 

ローゼン氏は、中国は昨年2022年の経済成長率を3%だと発表したが、そんなわけはなく、マイナス成長だったのは明らかだとして、公式統計は全く当てにならない主張した。 

 

中国では、不動産セクターの落ち込みにより企業投資は横ばいかマイナスが今年も続いており、輸出も落ち込んでいる。税収や手数料収入の減少を受けて、政府支出は抑制されている。国有企業や銀行への支援は行われたものの、家計への支援を行う財政出動は斥けられた。 

 

 

地方政府はバスサービスを削減し、明かりを照らす街灯の数も減らしている。見かけの成長を押し上げるために、過去に遡った統計改変まで行っている。若年層の失業率など、厳しい状況を伝える統計については発表を停止した。 

 

「一帯一路」参加国からの債務返済が、新たな外国への開発援助額を上回る事態になった。中国株が主要株式市場の中で最低レベルのパフォーマンスとなっている。婚姻率と出生率が過去最低に落ち込んでいる。 

 

こうしたことから、中国経済が今年5%成長するというのも正しくないだろうと、同記事は指摘している。 

(続く)