欧州が警戒する「中国製EV」
EVは生産時に温暖化効果ガスを大量に排出することから、すぐに廃棄されれば気候変動対策としてメリットは大幅に減じてしまう。
車両の使用済みバッテリーにはニッケルやリチウム、コバルトなどの希少金属が含まれており、リサイクルをしなければ資源の無駄遣いになることは言うまでもない。
中国ではEVの急成長の負の遺産が顕在化しているが、海外でもEVに対する風当たりが強くなっている。EVの重量はガソリン車よりも平均で約450キログラム上回ることから、衝突時の危険性が指摘されるようになっている。
全米研究所によれば、車1台の重量が450キログラム増えれば、追突事故で死亡する可能性は47%高まるという。
英国では議会関係者の間で「中国製EVが英国内での中国によるスパイ活動を可能にする」との懸念が広がっている(8月6日付英テレグラフ)。中国製スマホで同様の問題が指摘されてきたが、中国製EVも大量の情報を収集する手段になりうるというわけだ。
欧州連合(EU)は9月13日、国家補助金の恩恵を受けている中国製EVに対する関税導入の検討を開始しており、好調だったに輸出の環境にも陰りが見えてきている。
最も深刻な問題は、中国の自動車業界の内情が厳しいことだろう。
BYDの王伝福社長 Photo/gettyimages
中国人労働者を襲うリストラ
9月10日付ロイターは「中国の自動車労働者を襲う賃下げ、需要減と値下げの悪循環」と題する記事を報じた。
政府が投じた多額の援助が引き起こした過剰生産能力が災いして、中国ではEVの価格競争によって自動車メーカーは、ギリギリのコスト削減を迫られている。
そのため、3000万人に上る自動車産業労働者や10万社を超える自動車部品メーカーに深刻なしわ寄せが及んでいるという。
EVが売れても中国経済が一向に潤わない現状について、エコノミストらは「中国の自動車産業は価格競争のあおりで経済成長の足を引っ張る可能性さえある」と警告している。
このように、中国製EVを巡る環境は厳しさを増すばかりだ。
残念ながら、中国経済の苦境脱出の決め手にはならないのではないだろうか。
さらに連載記事『習近平の悪手が止まらない…!悲惨さを増す「EV墓場」の実態と、「中国大恐慌」のトリガーを引く「経済見殺し政策」のヤバすぎる中身』(https://gendai.media/articles/-/117448)では、中国がいま襲われている“負の連鎖”について、さらに詳しく解説する。
https://gendai.media/articles/-/116281
中国製EVは世界でその存在感を高めているが、果たして低迷している中国経済の救世主となり得るものなのか、と言った塩梅の論考である。
中国ではBEVが急速に普及した反面、いろいろと面倒なことが起こっているようだ。
中国では、今、電気自動車・EVの墓場が問題となっているという。
豪雨災害で水没したBEVも修理費用の高さから放置されるケースがかなりあったようで、更には、国からの高額な補助金の削減と停止を受けて配車サービス会社の倒産などによるBEVの大量廃棄が発生しているという。
しかも急拡大したNEV市場であるが、過当競争による過剰生産のためにBEVの大量廃棄も「EVの墓場」を形作っている様だ。
(続く)