さて次は中国の海洋進出の状況の把握だ。中国はもともと国内整備に手一杯で
なかなか海洋支配へは乗り出せなかった。ところが国内整備も進み石油資源の
必要性が増大し更に1969年に東シナ海に海底油田があることが判ったことに
より、海洋支配へ乗り出すこととなる。日本は、1966年以降、帝国石油、うるま
資源開発など4社が試掘申請の権利を獲得した。資源エネルギー庁は「日中の
境界確定を危うくする探査、掘削には慎重にならざるを得ない。境界確定なくし
て作業をすることは無い。」「国際紛争の恐れのある地域の探鉱事業へは、石
油開発公団の投融資は行わない。」などのへっぴり腰の事勿れ主義に終始し
た。中国による東シナ海のの石油開発に関する事項を先の年表に、”赤字で
追記”しておいた。これは、(財)DRC研究委員・五味睦佳氏による『中国の海洋
進出』より抽出したものである。( http://www.drc-jpn.org/AR-8/gomi-04j.htm )
それを参照しながら、ご一読願う。
海洋支配をねらう中国の遠謀 (赤字は「中国の海洋進出」よりの追加の項目)
no. いつ だれが 頁 なにを
1. 1949.10.01 中国 122 中華人民共和国は建国当初から台湾を軍事侵攻する計画を持っていた。
2. 1950.06.25 朝鮮戦争 123 北朝鮮による韓国への侵略戦争19500625~19530727
3. 1953 00 00 中国 124 中国軍の近代化着手、ソ連の全面的援助協力だが、核を優先。
4. 1955 00 00 台湾海峡 123 中共軍と蒋介石との戦争で、米国は機動部隊派遣
5. 1955.00.00 中国 124 核開発を決定、'55~'56年
6. 1956 00 00 中国 124 人民戦争戦略、人民の大海に埋葬する。核と人民戦略の2本足軍事路線
7. 1958.00.00 国際 2/5 大陸棚に関するジュネーブ条約。境界線は、合意が成立しない場合は等距離原則を適用。
8. 1958.08.00 台湾海峡123 中共軍金門砲撃で、米国は機動部隊派遣。軍艦は陸に上がれない(毛沢東)。
9. 1964.10.00 中国 125 中国初の核爆発実験成功、東京オリンピック最中。
10. 1966.00.00 日本 3/5 帝国石油、うるま資源開発など4社が試掘申請の権利を獲得。しかし試掘は中国に気兼ねをして、認めていない。
11. 1969.00.00 日本 1/5 日本側調査で埋蔵量、1,095億バーレル。'69~'70年調査。
12. 1969.00.00 中国 3/5 東シナ海に海底油田の存在が判明。これがきっかけで中国の海洋進出が始まる。
13. 1970.00.00 中国 124 中国核開発進展
14. 1970.00.00 中国 127 東シナ海で、海洋調査実施。石油資源開発。
15. 1970.00.00 中国 3/5 西沙諸島を支配化に収める。
16. 1970.04.00 中国 125 人工衛星打ち上げ、中距離弾道ミサイル完成。
17. 1970.07.00 中国 128 シュペルフルロン艦載ヘリコプター(仏)、ハリアー垂直離着陸戦闘機(英)より購入計画。
18. 1971.12.30 中国 4/5 中国は外交部声明と言う形で、尖閣諸島の領有を主張する。台湾も同年6/11に外交部声明で尖閣諸島の領有権を主張している。
19. 1973.00.00 国連 126 海洋法条約会議で「海洋の時代」にはいる。
20. 1973.00.00 国際 2/5 新海洋法条約。等距離適用の原則が明確に記述されていない。
21. 1973.01.00 米国 126 ベトナム停戦とアメリカのアジアよりの撤退。
22. 1974.01.00 中国 126 南シナ海の西砂諸島に進出、拠点確保。
23. 1980.00.00 中国 126 80~'90に南沙諸島のベトナム南部海域、フィリピンのパラワン島西部海域に 進出。
24. 1980.00.00 中国 126 西沙の主島・永興島に2600mの滑走路、ベトナム南部海域に5個所の軍艦島。フィリッピン海域のミスチーフ礁には、艦艇基地。海南島海空軍基地の地下要塞化。
25. 1980.00.00 中国 127 東シナ海で石油試掘開始。
26. 1980.00.00 中国 128 仏より艦載ヘリ・ドルファン購入、駆逐艦などに搭載。
27. 1980 00 00 中国 1/5 中国側調査で埋蔵量、700~1600億バーレル。
28. 1980.00.00 中国 3/5 南沙諸島を支配下におさめる。
29. 1980.05.00 中国 125 大陸間弾道弾発射実験成功、フィジー諸島近海へ。
30. 1980.05.00 中国 128 ヘリによる南太平洋フィジー諸島でのICBM実験でカプセル回収に成功。
31. 1985.00.00 中国 125 百万人の兵員削減、'85~87年。
32. 1985.00.00 中国 128 オーストラリアより空母「メルボルン」16千トンを購入。
33. 1985.00.00 中国 4/5 「戦略的国境」概念の導入。地理的国境は静的に固定だが、戦略的国境は軍事力や 政府の意思で変化する。
34. 1986.00.00 中国軍 124 海軍発展戦略
35. 1986.00.00 中国 125 「国防発展戦略」提示、空母保有計画判明。「海軍発展戦略」作成。
36. 1986.12.00 中国 125 原子力潜水艦の外洋航海訓練成功、潜水艦発射短距離ミサイルも。
37. 1987.04.00 中国 128 地上での模擬空母飛行甲板での離着陸訓練成果発表。
38. 1989.03.17 中国 126 「開放軍報」、海洋制空権>制海権→海軍航空部隊=航空母艦。
39. 1990.00.00 中国 127 日中中間線で石油採掘施設建設。ヘリポートとなる。 日本のEEZ内で中国調査船活動、中国艦艇、潜水艦領海侵犯が頻発。
40. 1990.00.00 中国 128 ロシアから「ミンスク」(ヘリコプター搭載軽空母)、「キエフ」(垂直発着機 搭載)を購入。 さらに、建造中の「ワリヤーグ」を購入する。
41. 1990.00.00 中国 3/5 東シナ海に進出、調査活動が活発化。
42. 1991.01.00 中国 128 艦載ヘリコプター部隊が編成される。
43. 1992.00.00 中国 3/5 領海法を制定し、尖閣諸島の領有権を明記する。
44. 1992.00.00 中国 4/5 海洋法採択を受けて、日本周辺海域で海洋調査船を展開。
45. 1994.00.00 中国 2/5 94年以降中国調査船が、わが巡視船の警告を無視して調査活動を実施。
46. 1995.05.00 中国 2/5 中国海洋調査船・向陽紅9号が、一ヶ月以上尖閣諸島の沖縄トラフを囲む海域で資源探査 の海洋調査を実施。
47. 1995.12.00 中国 2/5 石油試掘リグ勘探3号が、日本側海域で試掘、'96年2月に試掘に成功して引き上げ。 海保の作業中止命令を無視。
48. 1998.00.00 中国 1/5 日中中間線から約70kmでの「平胡ガス田」の開発に成功と発表。
49. 1998.11.06 W.times --- 中国人民解放軍は衛星破壊、通信ネットワーク妨害用レーザー兵器を建造している、 と報じた。国防省報告によると「アサットAsat」と呼ばれる対衛星兵器は、諜報システム のセンサーを破壊すると言う。 http://wiredvision.jp/archives/199811/1998110606.html
50. 2000.00.00 中国 125 海軍発展戦略の第一段階完了、各種艦艇の研究開発と建造、人材育成。
51. 2000.05.00 中国 130 中国情報収集艦が、対馬、津軽、三陸沖、犬吠埼、伊豆諸島、紀伊半島沖、大隅海峡を通過し東シナ海に抜ける。'00/5~'00/6に掛けて。
52. 2000.06.00 中国 130 中国情報収集艦が、対馬、津軽、三陸沖、犬吠埼、伊豆諸島、紀伊半島沖、大隅海峡を通過し東シナ海に抜ける。'00/5~'00/6に掛けて。
53. 2000.11.22 中国 --- 「中国の宇宙開発、白書」を国務院情報局が発行。
54. 2001.00.00 中国 127 小笠原、硫黄島~南西諸島に海洋調査選出没。潜水艦と機雷施設目的。
55. 2001.00.00 日中 3/5 2ヶ月前までに事前通報する制度を導入する。しかし常に中国は違反している。56. 2003.00.00 中国 127 小笠原、硫黄島~南西諸島に海洋調査選出没。潜水艦と機雷施設目的。
57. 2003.00.00 中国 2/5 年間石油輸入量見通し、9000万トン。
58. 2003.10.15 中国 129 有人宇宙船「神舟5号」を、「長征2F」ロケットで打ち上げ成功。 http://www.nikkeibp.co.jp/archives/271/271666.html
59. 2004.00.00 中国 127 西太平洋、グアム海域の調査完了。米第七艦隊を阻止するため。
60. 2004.04.11 中国 130 中国は、日本の沖ノ鳥島は単なる「岩」だと主張し、日本に無断で海洋調査を実施している。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%B2%96%E3%83%8E%E9%B3%A5%E5%B3%B6
61. 2004.05.28 中日新聞 1/5 中国が、春暁ガス田の施設建設に着手したと報道。 日中中間線からわずか4kmの中国側。
62. 2004.05.28 自民党 3/5 「海洋権益に関するワーキングチーム」会合、資源を中国に持って いかれるとの意見続出。
63. 2004.06.09 日本政府 4/5 中国に「国連海洋法条約に違反する」旨の抗議。中国は馬耳東風と日本の言葉に耳を傾けない。
64. 2004.06.10 自民W.team4/5 日本の慣用権益を護る為の報告書、をまとめる。
65. 2004.06.23 中川経産相4/5 中国の天然ガス開発現場を上空より視察。
66. 2004.07.04 日本 1/5 ノルウェイからのチャーター調査船「ラムフォーム・ビクトリー」、7/4那覇港出港。 中国側抗議。
67. 2004.07.09 中国 1/5 北京の日本大使館前で、中国活動家が抗議デモ。
68. 2004.08.05 自民W.team4/5 「大陸棚調査・海洋資源等に関する関係省庁権楽会議」を設置、と発表。
69. 2004.08.05 日本政府 4/5 水曜資源探査を強化する方針。探査船の独自開発、独自保有も検討。
70. 2004.08.26 中国南京市夕刊紙 1/5 春暁ガス田と中国本土を結ぶパイプラインの建設開始と報道。
71. 2004.10.00 日本政府 5/5 「ラムフォーム・ビクトリー」調査船による調査終了予定。
72. 2005.05.00 中国 2/5 春暁ガス田から海底パイプで、中国大陸に天然ガスが送られることになる。
73. 2005.10.12 中国 --- 「神舟6号」打ち上げ成功、2度目の有人宇宙船。
74. 2006.00.00 中国 2/5 春暁ガス田、年間25億㎥の生産が見込まれる。
75. 2007.01.11 中国 --- 自国の気象衛星を標的に、衛星破壊実験を実施し、成功。軌道上の破片が危険。 http://www.nikkeibp.co.jp/style/biz/feature/matsuura/space/070202_hakai/
76. 2007 03 16 日本 --- 海上保安庁は、周辺海域の船舶や操業漁船の安全確保のため沖ノ鳥島灯台を 設置し 運用を開始した。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%B2%96%E3%83%8E%E9%B3%A5%E5%B3%B6
77. 2008.00.00 中国 128 長江河口の長興島に空母建造用ドック完成、艦載機パイロット養成開始。
78. 2008.09.25 中国 --- 「神舟7号」打ち上げ。3度目の有人宇宙船。
79. 2008.10.00 中国 130 中国艦隊4隻(最新鋭駆逐艦含む)が、津軽海峡を通過し太平洋に出る。
80. 2008.12.23 中国 122 2016年までに2隻の中型空母を完成し、ワリヤーグと3隻体制の運用を開始すると発表。
81. 2008.12.26 中国 131 中国ソマリア沖に駆逐艦派遣、初の国外作戦行動。 http://news.searchina.ne.jp/disp.cgi?y=2008&d=1222&f=politics_1222_006.shtml
82. 2009.01.00 米国情報 130 西太平洋における中国潜水艦の活動は、ロシアのそれを凌駕している。
83. 2011.00.00 中国 4/5 近い将来中国は、日本側海域で試掘、あるいはプラットフォームの建設を始める。
84. 2020.00.00 中国 125 第二段階完了。中距離航空機部隊、攻撃型通常潜水艦。ヘリ搭載中型水上艦艇。
85. 2020.00.00 中国 2/5 年間石油輸入量、2~3.2億トンと言われる。'20年までの経済成長率7.2%前後を維持したい。
86. 2021.07.00 中国 126 中国共産党結党百年。
87. 2049.10.00 中国 126 中国建国百年。
88. 2050 00 00 中国 126 第三段階完了。空母、対空・対艦・対潜作戦能力の機動部隊。
中国は核開発の進展に伴って、外に目を向け始めた。まず南シナ海、海南島に
近い西沙諸島を1970年代にベトナムから取り上げ、ついで1980年代にはフィ
リピン海の南沙諸島を支配下におさめている。その何れも軍事力を背景にして、
ベトナムやフィリピンの主張などは全くの無視。そして西沙諸島には、1980年
代には、2,600mの滑走路、軍艦の基地を造り上げ軍事拠点化している。
(続く)