ロシアのウクライナ侵攻(25)

■“守り”の戦いで 戦争長期化 核使用の口実も―


ロシアは戦力を大量に喪失し、更には戦力を補えない状態が続いていることは確かなようだ。ウクライナ国防情報局のブダノフ情報局長は「ターニングポイントは8月の後半になる。激しい戦闘行為のほとんどは今年の終わりまでに終了するだろう」と語り、アンドルシフ内務省顧問は今後について次のように分析した。

「ロシア軍が東部で占領地を拡大する第2段階に失敗し、現在は防御戦に移行。占領地を維持する第3段階入った

これはどういうことを意味するのだろうか。

元・陸上自衛隊東部方面総監 渡部悦和氏
「ロシアの第3段階とは、現在ロシアが占領している地域を保持することだ。そこで、ロシア軍とウクライナ軍の戦力比だが、例えばウクライナ側に防御するロシア側の5倍の戦力があるかと言えば、それはない。そうなると、もう膠着状態にならざるをえない。だから来年まで戦争は続いてもおかしくない。もしプーチン大統領がこの戦いはまだまだ続けるんだという決心を変えなければ、長くなるんだろうと思う」

 

東京大学先端科学技術研究所 小泉 悠 専任講師
「今度はウクライナ軍が、陣地をとったロシア軍を追い出しに掛かるので、これはウクライナ軍が相当に苦労するとは思う。ある程度の領域を取り返せるにしても時間は掛かる。2014年以降東部では紛争がずっと続いて来たが、こんな風にだらだらと続くこともあり得るだろう。政治的にもどこまで取り返しにいけるのか難しい判断を迫られると思う」

更に今後の警戒すべき点について2人はロシアによるザポリージャ州、ヘルソン州の併合だという。

元・陸上自衛隊東部方面総監 渡部悦和氏
「ロシアはヘルソン州で防御態勢をどんどん作っている。ロシアにとって、ヘルソン州は絶対に明け渡したくない成果。それを確保するために一所懸命陣地を構築して、プーチン大統領に是非ロシア領にしてくださいと要望しているのだと思う。そうなると、ここが攻撃されたらロシアの領土が侵されたとして戦術核を使う、という脅しが実際に起きる可能性があると思う」

東京大学先端科学技術研究所 小泉 悠 専任講師
ロシア連邦の軍事ドクトリンを見てみると、過去20年間ぐらい核使用基準は変わっていない。ひとつは相手が大量破壊兵器を使った場合、もう一つは通常兵器による攻撃であってもロシアの安全保障が深刻に脅かされた場合に核兵器を使う権利を持つという言い方をしている。現状は特別軍事作戦。これだと国内法上、核兵器を使いづらいと思う。でも、ザポリージャ、ヘルソンがロシア領になるということになれば、これはロシアの領土が侵されているんだという建付けになるので、核使用の布石になると見られてもおかしくはない」

実際、メドベージェフ前大統領が17日こんなことを言っている。

我が国が攻撃された場合には、即刻、超強大な報復が可能だ

東京大学先端科学技術研究所 小泉 悠 専任講師
「一方で、戦術核にせよ何にせよ、使った場合、どこまでエスカレートするか、これはロシアには制御できない。ウクライナがどう応じるか、西側がどう応じるかにかかって来る。従って、ロシアの核使用は現実に考えると、そう簡単に気軽に決断できる問題ではないはず。現実に我々はどのへんまでロシアを抑止できていて、何処が不利なのか、あいまいな領域はどこなのか、ということを考えながらウクライナ戦略を考えていく必要がある」

追い込まれていくロシアに対し小泉氏は、いまこそ経済制裁を西側が“働きかけ”の武器にすることを提案した。

東京大学先端科学技術研究所 小泉 悠 専任講師
「戦車の部品一つとっても、半導体であるとか、それを作るための工作機械だとか、自国じゃできないわけです。ロシアもまた国際的なサプライチェーンの中にいないと、もう大国として振る舞うことは出来ない。だから、そこにロシアに対して働きかける余地はあると思う。経済制裁もすぐに効かないじゃないかとか、一般民衆が苦しむだけで権力者は平気ではないかとの意見もあるが、私はロシアの軍事力とか権力とか、産業とか、我々がどこを閉めたらロシアのどこが痺れるのか、相関関係をマッピングして、ちゃんと働きかける方法はまだまだあるのではないかと思う。それは対ロシアだけでなくこれから日本が色々な所で使ったり、使われたりする武器なのだろうと思います」

BSTBS 『報道1930』 518日放送より)

 

https://newsdig.tbs.co.jp/articles/-/50880?page=1

 

 

 

ロシアは「我が国が攻撃された場合には、即刻、超強大な報復が可能だ」と、この論考の終わりの方で述べている。

 

これは核攻撃を意味しているが、それにしても核で反撃されてしまうので、核を持っている国に対しては、核攻撃は行わないであろう(と推測している)。

 

これは核を持っていない国に対するものである。先には次のように述べておいた。

 

(続く)