纏向遺跡と邪馬台国(日本古代史の謎)(25)

倭国邪馬台国)を含む日本列島全体としてはまた別の話で、先にも話題にした奈良県桜井市纏向遺跡当たりが、当時としては日本国の中心地であったようだ。 

 

漢委奴国王」の金印や、この魏志倭人伝邪馬台国」の記録が残っていたので、「邪馬台国」と「卑弥呼」や「台与」が一偏に有名になってしまっているが、日本国の中心はあくまでも大和地方であったのであろう。 

 

と同時に、神話の話と混同させるわけでもないが、高天原はどこにあったのか、と言った思いも自然と湧いてくるものである。 

 

高天原は、古事記の冒頭からすでに神様の住まう場所として登場している。 

しかも「天地初発之時」(天アメと地ツチとが初めて姿を見せた時)に、高天原に成り出でた神の御名は、天之御中主神アメノミナカヌシノカミ、次に高御産巣日神タカミムスヒノカミ、次に神産巣日神カムムスヒノカミ。この三柱の神は、みな独り神(性別のない)と成りまして、身を隠された。・・・と書かれているので、高天原は天テンにあるような錯覚に陥ってしまうが、高の下の天はアマと読め(訓高下天云阿麻下効此)、と太安万侶の注釈があるようなので、我々が現在意識する天テン・空では必ずしもない、ものと思われる。また「あま」は海にも通じるものであり、天アマと同じ発音だという。 

 

なお、現代語訳は、「読み解き古事記 神話篇」(三浦祐之著、朝日新書)による。 

 

そして高天原に対して、大地の方では、二柱の独り神が生まれて身を隠されたと書かれており、これらの五柱の神は、別コト天つ神と言う。 

 

以上五柱に続いて、神世七代の神がみが生まれてくる。 

 

独り神二柱と男女セットの五代十柱の神(合計七代)が続くのである。 

その五代目が、伊耶那岐イザナギ伊耶那美イザナミの男女の神である。 

この二柱の神が、結婚して日本と言う大地を作り上げてゆくことになるのである。 

 

イザナキとイザナミは、彼らの前に生まれたすべての天つ神より、「この漂っている地を固めて作りなさい」と言われるのである。そのために「天沼矛アノヌボコ」を授けられる。 

 

ここに初めて具体的な国造りの物語が始まるのであるが、それまでの神々は(自然に)成る神であったが、これからは(能動的に)作る生むと言う積極的な意思が働くようになっている。これも先の「読み解き古事記 神話篇」(三浦祐之著、朝日新書)の29頁に記載されている考え方である。 

 

この二柱の神(イザナキとイザナミ)は、混沌としたカオス状態の地を、授かった「天沼矛」でかき回して、沼矛より滴り落ちた塩が固まって「オノゴロ島」が出来上がるので、その島におくだりになるのである。 

 

それまでは「天の浮橋」に立たれていたのであり、「天の浮橋」と言うと、なんとなく天上世界に居た神々が想像されるのである。 

 

こんなところから「高天原・たかまの(が)はら、タカアマハラ」とは、天上世界のことを言うのではないかと言った感覚を、自然と持ってしまうものであるが、この「高天原」では水田耕作が行われており、養蚕や機織りも行われているのである。「高天原」は、いわゆる農業社会(国家)の様相を呈しているのである。西洋での天上世界ではないのである。 

(続く)