カーボンゼロ、クルマの未来はどうなる?(16)

車産業、モノのグローバル化は限界 サービスで合従連衡 

激動モビリティー 日産・ルノー再出発の未来(下) 

自動車・機械2023年2月9日 2:00 [有料会員限定] 

 

「ノーマージャー(もう統合はない)」。1月29日、パリのセーヌ川沿いの建物。ルノーが創業地で開いた会議の席上、ルカ・デメオ最高経営責任者(CEO)らが資料を取締役らに示した。合意のデメリットとして英文で書かれたものだ。日産自動車への出資の歴史はフランス政府の意向を受け経営統合の夢を追いかけた歴史でもあった。相互15%出資合意で夢は終わった。 

 

軒並み提携解消 

フランス・パリのセーヌ川沿いのルノー創業地にある建物で取締役らの会議が開かれた         

 

1990年代は巨大な自動車メーカー同士の大再編の幕開けの時代だった。象徴が世紀の大統合と称された、98年のダイムラー・クライスラー(後に独メルセデス・ベンツグループと欧州ステランティスに再編)だ。 

主導したのは海外メーカー。バブル経済の崩壊で経営難となった日本車メーカーへも次々と触手を伸ばした。日産だけでなくマツダ三菱自動車も欧米メーカーの傘下に入った。 

 

 

 

車産業は車両の大量生産でコストを下げ、標準のガソリン車を世界展開する戦略が基軸となったが、現在は90年代以降の日本車と海外メーカーとの提携は軒並み解消。今やルノーと日産、ホンダと米ゼネラル・モーターズGM)など一部を残すのみだ。

 


 

 車両などモノのグローバル化は限界を迎え、ソフトサービスを中心にした合従連衡が主体の新グローバルの時代に入った。 

 

長らく世界最大手メーカーとして君臨したGMはその象徴だ。欧州などで環境対応が求められるようになっても、大量のガソリンを消費する「ピックアップトラック」が主力の米市場に引きずられ環境技術で出遅れた。 

 

2017年には欧州から事実上撤退し中国、南米を除く世界のほとんどの地域の事業縮小に追い込まれた。 

 

フォルクスワーゲンVW)は環境対応でディーゼル車にシフトしようとしたが不正でつまずいた。トヨタ自動車をはじめ日本車メーカーはお家芸ハイブリッド車(HV)で存在感を高めたが、EVシフトでは出遅れたその間に米テスラ中国・比亜迪(BYDなど新興勢や異業種が、伝統的な車大手の間隙を突いた。 

 

 

世界初の量産ガソリン車である「T型フォード」が誕生した1900年代以降、車産業は動力が変革のカギだった。東京大学生産技術研究所の中野公彦教授は「付加価値の源泉は動力から、車が提供できる機能に変わっていく」と指摘する。 

 

EVは早くも標準化が始まり、特許やソフトウエアなど知的財産の重みが増す。それぞれの地域や国で車に求められる規制や価値はますます多様化する。日仏連合は連携の新しい形を模索するが難路だ。 

 

日産の内田誠社長兼CEOは「今までの延長線上では成長できない。カルロス・ゴーン被告時代の)古傷もある。24年分のツケが回ってきた」と話す。日産もモノのグローバル化の壁に阻まれた。欧州はルノーに任せるといった柔軟な姿勢が求められる。 

 

ドイツでは脱炭素の供給網構築のため車の原材料などのデータを共有する「カテナX」が立ち上がった。完成車や部品メーカー以外に米マイクロソフトや独SAPなど異業種が幅広く加わる連合だ。知財やソフトなどIT(情報技術)でも規模がなければ勝負の土俵に上がれない。緩やかな提携が解になる。 

 

 赤間建哉、湯前宗太郎、林英樹、北松円香、堀田隆文が担当しました。
 

 

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https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC303T10Q2A231C2000000/ 

 

 

 

CO2ゼロを巡るクルマ業界の動きは今のところ混沌としているが、このルノー・日産グルーブの不平等な資本関係の解消により一段落するどころか、ますますEVを巡る動きは活発になってゆくのではないのかな。 

(続く)