カーボンゼロ、クルマの未来はどうなる?(29)

と言うことは、発電エネルギーは「原子力」か「再生可能エネルギー」か「水素(含む合成燃料)」でなければ、EV・電気自動車でもCO2の削減はそれほど望めない、と言うことです。従って中国では、原子力発電を進めていますが、もっぱら石炭火力で発電していますので、BEVになってもCO2はそれほど減りません。 

 

がBEVをやみくもに進めていけば、資源や環境問題に突き当たるものと思います。日本の火力発電では、輸入中国製BEVの増加は(充電環境も弱いので)百害あって一利なし、と思います(とは少し言い過ぎか)。 

 

 

まあ言い過ぎとも思えませんが次に、既販車のCO2ゼロ対策に寄与すると思われる「合成燃料」について少し述べてみたいと思います。 

 

これについては、 

小生のブログ「世界の流れは、EV化(80~)」(2022.03.09~)で少し述べているので、そこから(NO.81,82)少し引用して述べて見たい。 

 

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合成燃料CnH2n という化学記号(https://bizchem.net/what-is-ft/)になっているので、二酸化炭素・CO2と水素・H2から作られるのであるが、一般的に工場から排出されるCO2やDAC(Direct Air Capture)による空気中からのCO2と水・H2Oの電気分解による水素・H2を高熱で分解して合成ガス・CO+2H2を作り、それをFT合成という方法で液体の合成燃料CnH2nとするものである、とものの本には書かれている。

FT合成とは、CO2を高温の水蒸気・H2Oで分解してCOとH2の合成ガスを作り、その合成ガスをコバルトや鉄の触媒で再度つなぎ合わせることによって、液体の合成燃料・C2H2nを作る方法である。

FTとは、第二次世界大戦中に石油に事欠いたドイツのフランツ・フィッシャーとハンス・トロプシュが発明した燃料で、その頭文字をとってFT(Ficsher-Tropsch)合成と呼ばれているものである。(https://bizchem.net/what-is-ft/ 

 

先の論考にもあるように、次のような過程で合成燃料は作られるものである。


工場・DACよりCO2→
           →CO+H2(合成ガス)→FT合成→合成燃料・CnH2n 
高温の水蒸気・H2O →


小生はここら辺の技術的なことには詳しくはないので、間違いがあればどんどんご指摘を願うが、このような合成燃料が一般的となれば、ICE(Internal Combustion Engine)・内燃機関でもCO2フリーの燃料として重宝されることには間違いなかろう。

なんといっても、クルマで言えば現在使用されている(いわゆる中古)車にも使える燃料であることが、最もメリットがあることであろう。

2020年時点における日本の自動車保有台数は約8,185万台だと書かれていたが、このうちCO2の排出の少ない電動車(HEV,PHEV,EV,FCV)は、11%ほどだという。残りの89%はガソリンエンジン車で、CO2の排出がある意味野放し状態となっている。もしリーズナブルな価格で合成燃料が提供されれば、これらの89%のガソリンエンジン車にも合成燃料が行き渡り、CO2フリーとなりうるのである。だから(小生は)合成燃料の時代が早く来ることを、心から願っているものである。

クルマに限らず、石油燃料を使うモビリティも、この合成燃料を使えばCO2フリーとなり得るものである。

電動航空機なんぞと言う代物は、重たいバッテリーをたくさん積まなければならないので、全くものになる乗り物とはならない代物である。だから、航空機などには、この合成燃料は最もふさわしい燃料となりうるものである。船舶も同様に、合成燃料であればCO2フリーの燃料として大いに重宝されるものである。いわんや、自動車においておや、である。

もちろん自動車においても同様に重宝される燃料であることは、言わずもがなである。

このように既存のインフラが使えて、且つ、内燃機関・ICEで使える燃料であるこの「合成燃料」は、まことに重宝するものである。何とか技術開発が進み、コストも競争力のあるものとなれば、あらゆるモビリティで使われることになろう。2030年、2040年と言わずに、早く一般的に流通する代替燃料となればよいと願っている次第である。

そんなこんなで、トヨタもカーレースでこの「合成燃料」を使って、その実用性を確かめてゆくことでしょう。合成燃料が流通しだせば、水素・H2も大量に市場に投入されることになり、いわゆる水素社会の実現が現実のもの(に近づくこと)となろう。

そうすれば、水素を燃やす「水素エンジン」も陽の目を見ることとなり、CO2フリーの燃料革命が起きることになる。すると次に起こることは、FCV・燃料電池水素エンジンの時代となってゆくのではないのかな(もちろん合成燃料も)。とは少し大袈裟であるが、いわゆる「水素社会」の到来である。 

 

(当然火力発電にも水素や合成燃料が使われている筈と思っています。) 


次の論考は「合成燃料」ではなくて、直接「水素」を燃料として使うことを念頭に置いたものであるが、ご一読願う。水素も有望な「脱炭素燃料」である、合成燃料よりも有望かもしれない。 

 

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CO2は工場などで排出されているのでそれを使えば有効活用とはなるが、小生はDACDirect Air Captureによる物を推奨したい。火力発電所や工場などで排出されるCO2はその排出元で、責任をもって処理されることが必要と考えている。 

 

工場などで排出されるCO2は、何らかの過程で新規に生成されたCO2となるものなので、そこで責任をもって処理されるべきものと考える。放っておけば地球上のCO2が増える(純増)ことになってしまうからである。 

 

と言うのも、合成燃料では燃焼させればCO2が排出されるのではあるが、DACで空気中から取り出されたCO2であるので、それがまた空気中に戻されることになるが、空気中のCO2は増えないのである。取り入れたものがまた排出されるだけなので、-+で増加はしないのである。 

 

火力発電所や工場などから排出されるCO2を使う合成燃料であれば、空気中のCO2は増加してしまうのである。だから工場で責任をもってそのCO2を処理してもらいたいのである。空気中のCO2は増えないように、処理されなければならないのである。 

 

DACDirect Air CaptureによるCO2を使用した合成燃料であれば、燃やして排出されるCO2は、取り込んだものが排出されるだけなので、-+でCO2は増加しないのである。 

 

だから少しはコストがかかるが、DACのCO2を使ってもらいたいのである。 

(続く)