カーボンゼロ、クルマの未来はどうなる?(42)

 

上記のコメントの一つにある「よほどバッテリーの技術革新が起きない限りEVはガソリン車に勝てない(バッテリーの軽量化、航続距離大幅向上など) ◎電力不足も懸念される中で電気自動車を進めようとか狂気の沙汰でしかない」と言うことは、至極真っ当な意見である。

 

BEVの電気をどのように確保するのか、また、電気をためるバッテリーの技術をどのように高め更にはコストを下げてゆくのか、と言った話は、電気自動車を進める上では、ついて回る懸案事項である。 

 

EUがどのように電気自動車の時代を創り出そうとしているのかは知らないが、このような電気自動車のよって立つBatt.などの基盤の整備も重要事項なのであるが、かなり難しい。BEVの時代は、おいそれとはやっては来ないのではないのか。

 

だからCO2フリーのためには、合成燃料も必要となってくるのであるから、遅ればせながら、EUも合成燃料(f-fuelなど)の使用を認めざるを得なくなったものと思われる。 

 

とは言うものの、合成燃料のコストはべらぼうに高すぎて、おいそれとは使えない代物なのであるから、安易には喜ばない方がよい。何度でもいうが、今は一部の大金持ちの高級車にしか使えないものであろう、ポルシェやフェラーリのような。

 

だから「合成燃料」の製造方法のブレークスルーが必須となってくる訳だが、これが相当難しい。だから、おいそれとは(合成燃料は)普及しないのではないのかな。 

 

だから「合成燃料」とか「e-fuel」と騒がない方がよい、それよりも「水素エンジン」や「燃料電池・FC(V)」の方が可能性がある様にも思われるものであるが、どんなものであろうか。

 

EU、土壇場のエンジン車容認 無理筋はEVか合成燃料か

沸騰・欧州EV(40) 

2023.3.31 

 

大西 孝弘 ロンドン支局長      

 

 土壇場での修正だった。欧州連合EU)は2035年内燃機関(エンジン)車の新車販売を禁止する方針だったが、3月28日のエネルギー相理事会で合成燃料を利用するクルマに限り販売を認めることで合意した。合成燃料はe-Fuelとも呼ばれ二酸化炭素(CO2)と水素でつくり、CO2排出量は実質ゼロと見なされる。

 

 主役はEUの執行機関である欧州委員会とドイツ政府だ。エンジン車の新車販売を禁止することについては、欧州委員会が強力に推進してきた。EU理事会や欧州議会も暫定合意するなど法案成立に向けて進んできたが、最終段階でドイツ政府が強力に反対し、欧州委員会が押し切られた格好だ。環境担当として欧州の自動車規制も統括する欧州委員会のティメルマンス上級副委員長は25日にツイッターで「我々はe-Fuelの将来的な利用について、ドイツと合意を見いだした」と述べた。 

 

 EUは世界の中でも厳しい環境規制を導入しており、その内容は世界各国の規制動向にも影響を及ぼす。今回の合成燃料の認可は世界の自動車関係者の大きな話題となっている。日本勢が得意なハイブリッド車(HV)について販売禁止になる可能性があったため、日本での関心も高い。

 

欧州委員会、ティメルマンス上級副委員長の翻意 

 

 筆者は2月後半、欧州委員会のティメルマンス上級副委員長にインタビューしていた(参照:「35年エンジン車ゼロ」より強烈な未来 欧州環境政策トップが示す)。

 

 35年にエンジン車の新車販売を禁止する規制に関連し、合成燃料の扱いについては繰り返し聞いた。それに対し、「排出ガスフリーにできなければ、EUで生産することも、EUで市場に出すこともできない」と述べていた。それからティメルマンス氏は急転直下で合成燃料を認めたことになる。 

 

 ドイツの反乱は今に始まったことではない。社会民主党緑の党自由民主党(FDP)の3党によるドイツの連立政権では、21年の発足当時から合成燃料の扱いについて意見が割れていた。環境政党である緑の党はエンジン車の新車販売を30年で全面禁止するよう求める一方、企業経営者などが支持基盤のFDPが合成燃料の推進を主張していた。

 

 21年11月に発表された合意書では、合成燃料に関する連立政権のスタンスは次のように明記されていた。「欧州委員会の新車のゼロエミッション化提案に対応し、合成燃料の利用車を除き、35年までに内燃エンジン車の新規登録を禁止する 

 

 こうした中、22年6月には欧州議会EU理事会が欧州委員会の提案を支持する方針を示す。10月には欧州議会EU理事会が35年に全ての新車の排ガスゼロ化について暫定合意。その際に合成燃料を例外とすることは含まれておらず、欧州委員会のティメルマンス氏が上記のように述べていたので、規制案はそのまま承認されるかとみられていた。 (↓参考記載 EU理事会組織)

 

EUの政策には27の加盟国の思惑が絡み合う

 

 最終的な合意に差しかかかって、ドイツ政府が反旗を翻した。FDPのウィッシング運輸相が規制案に反対の意向を示し、合成燃料の利用を認めるように圧力をかけたのだ。ウィッシング運輸相はドイツメディアに対し、「気候変動に左右されないモビリティを真剣に考えるのであれば、あらゆる技術的な選択肢をオープンにしておく必要がある。これには、e-Fuelで走るエンジン車も含まれる」 と述べた。 

 

 ドイツ政府は1月に官邸主導の会議を開催し、自動車メーカーから合成燃料に対する考えをヒアリングしていた。3月初旬に連立協議を開き、35年以降も合成燃料を使えるように働きかけることを確認している。連立政権を維持していく上で、FDPの意向を無視するわけにはいかなかったのだ。 

(続く)