カーボンゼロ、クルマの未来はどうなる?(43)

EUでも電動車で最多のHVの追い風になるか 

 

 トヨタ自動車などの日本勢はエンジンを用いるHVの開発と販売に力を入れている。EUにおいてもHVの販売台数は伸びており、電動パワートレーンの中で最も販売シェアが高い。 

 

 合成燃料の認可は一見するとHVの追い風になりそうだが、コスト構造を考えると利用拡大は簡単ではない。合成燃料は再生可能エネルギーを使って水素をつくり、CO2と化学的に合成する。生産過程で大量のエネルギーを使うため、必然的にコスト上昇は避けられない。日本の経済産業省の試算では、安価な再エネを利用できる海外で製造すると製造コストは1リットル当たり約300円、国内だと約700円であり、燃料税の設計にもよるがガソリン価格よりはるかに高い。 

 

 ドイツの自動車アナリストのマティアス・シュミット氏は、「合成燃料は非常に高価なので、エンジン車を利用する99%のユーザーにとってほとんど関係ないだろう」と指摘する。合成燃料は主に、電動化が難しい航空機の利用拡大が見込まれている。 

 

 HVはコストパフォーマンスの高さがウリで、米ウーバーテクノロジーズの運転手などによる業務用での利用も多い。高価な燃料を使うのは非常にハードルが高い。トヨタの関係者も「合成燃料は高級車用がメインになるだろう」と話す。 

 

ポルシェとフェラーリの僥倖 

 

 確かに高級車メーカーは合成燃料の開発や利用に積極的であり、今回のEUの決定は僥倖(ぎょうこう)をもたらした。独ポルシェはドイツ政府の補助を受け、合成燃料の開発と生産を進めている。同社は22年12月、独シーメンスエナジーとチリで合成燃料の生産を始めたと発表した。工場では風力発電機から水素製造の電解装置、合成燃料製造装置を備え、一気通貫で合成燃料を生産できる。 

 

 最初の合成燃料はポルシェのレース用に利用し、26年には年間5500万リットルを生産する予定。28年には5億5000万リットルを生産する計画だ。筆者がポルシェのミヒャエル・シュタイナー研究開発担当取締役をインタビューした際には、「初めはコストはかなり高くなるが、生産規模を増やせば1リットル当たり2ドル前後になるだろう」と述べていた(参照:ポルシェ開発トップ「CO2排出、問題はエンジンではなく燃料だ」)。 

 

2022年夏に日経ビジネスのインタビューに応じたフェラーリのベネデット・ビーニャCEO            

 

 EUが合成燃料を認める前から、独フォルクスワーゲンVW)CEO(最高経営責任者)兼ポルシェCEOのオリバー・ブルーメ氏は、合成燃料の利用に強い意欲を示していた。EUの決定の後には、フェラーリのベネデット・ビーニャCEOも歓迎の意向を示した。同社がEV開発に力を入れるものの、エンジン車に対して熱狂的なファンがいるからだ。筆者が22年にインタビューした際には水素エンジンの開発を進めていることを明らかにした(参照:フェラーリCEO「EVでソフト投資急増せず。水素エンジンの開発も」)。 

 

 むしろ、今回のEUの決定は、「合成燃料という小さな例外を認める一方で、35年にエンジン車の販売禁止を最終的に承認したことの意味が大きい」(ナカニ自動車産業リサーチの中西孝樹代表アナリスト)。22年におけるEUの新車販売に占めるEVの比率は12%で、燃料電池車を含めてこの比率を100%に高めるのは至難の業だ。 

 

 ただ、今回のEUの決定でEV販売比率が高まることがクリアになったため、各社はますますEV関連の開発や生産に投資を拡大していくだろう。ドイツの大手サプライヤー幹部は、「合成燃料が認められても非常にニッチな市場向けだろう。EVシフトの戦略は変わらない」と話した。 

 

 EU26年にエンジン車ゼロに向けた進捗を確認し、合意内容を見直す可能性がある。自動車メーカーにおいては、26年が最終的な戦略調整のタイミングになりそうだ。 

 

 強烈な規制を導入するEUの中の企業として、欧州最大手のVWはどのように成長戦略を描いているのか。「沸騰・欧州EV」シリーズの次回は、VWの戦略に迫る(サプライヤーのEVシフトを取り上げる予定でしたが、順番を変更します)。 

 

 

 欧州でEVの販売が急増しています。欧州で発売されたEVが時間差で日本に投入され、欧州の規制が日本の規制の参考にされるケースも少なくありません。そこで、日本の自動車産業の未来を考えるヒントになるように、欧州EVの虚実を伝えるシリーズを展開しています。 

 

 インタビューを交えながら各社の戦略を探ると同時に、「EVは温暖化ガス削減に寄与するのか」などといった様々な問題を検証していきます。これからインタビューをする会社の幹部や識者に対しては、読者のみなさんからの質問もぶつけたいので、質問をコメント欄に書き込んでください。自動車産業の未来を一緒に考えていきたいと思います。 

 

https://business.nikkei.com/atcl/gen/19/00122/033000166/ 

 

 

 

次に関連するコメントを載せておう。 

 

・合成燃料の製造方法の革新によりコスト低減 

・EV一辺倒ではCO2削減は出来ない 

・e-fuelは自動車だけのものではないし、水素の活用も必要となる 

 

 

 

ダメおやじ 

痴呆公務員 

>合成燃料の利用車を除き、35年までに内燃エンジン車の新規登録を禁止
ゴールポストを動かすのがお好きな連中ですから、これもどうなることか。
>製造コストは1リットル当たり約300円、国内だと約700円であり、
>燃料税の設計にもよるがガソリン価格よりはるかに高い。
現状はね。
輸入に頼る石油と変わらないけど、輸入すれば300円/Lです。
>合成燃料は非常に高価
日本の技術者の出番です。
合成燃料製法のブレークスルーを期待します。
>合成燃料という小さな例外を認める一方で、
>35年にエンジン車の販売禁止を最終的に承認したことの意味が大きい
せっかくのチャンスだ。日本初の画期的な合成燃料で、軒先を借りて母屋を乗っ取ろう! 

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ダメおやじ 

痴呆公務員 

EUの新車販売に占めるEVの比率は12%で、
燃料電池車を含めてこの比率を100%に高めるのは至難の業
札束の補助金付けてもEV12%。
西欧ですらコレですから、西欧より貧しい東欧・途上国はEV普及なんて夢のまた夢。
EUは温暖化を抑えることが目標。時間的余裕がないとも主張している。
だったらあらゆる選択肢を残した方が良い
EV一辺倒とかありえませんでした 

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MAD_DEMON 

機械器具設置工事業社長 

e-fuelは当分の間あんまり安くならないよ。
プロセスだけで言えばメタン合成プラント+長鎖化プラントだから、価格支配は多分メタン合成。ここもプラントレベル純度のCO2をどう獲得するかってのと、水素は水から作るだろうからこれの調達が容易であることが必要だけど、これも前処理としてRO程度は必要でしょう。両方とも結構なカネがかかるよ。あんまり純度が低いと触媒毒だったり副生成物の所為で製品の品質が下がる。
だからその前段階として、水素の直接燃焼による内燃機関燃料電池があって、その次にe-fuelだよ。
EVはコミューターだけなら大丈夫だけど、内燃機関全部排除すると高トルク・長距離運送つまりトラックに問題が出る。え?モーダルシフト?今のEUの列車管制で上手く行くとおもう人いるの?
翻って日本なら何やっても大体逃げ道があるよ。 

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偏屈オヤジ 

 

既存ICEで使うことができるe-Fuelならば、生産量とコストを勘案しながら化石燃料と混合して今から少しずつでもCo2を直ぐに削減できる。
生産にグリーン水素が必要な点は判るが、直ぐに活用できるのであれば、生産量に弾みがついて、急激に伸びる事が期待できるんじゃないかな。
BEV用に充電設備の増設や、それを使用できる様にするための大規模なインフラ整備(送電網、その他)より、既存のガソリンスタンドを使用する方が、遥かにトータルコストは安くなると思うんだが。
大体、自動車限定の話とした争点に成っているが、そこら中に溢れている、化石燃料を使って動く農業機械(小は耕運機から大は大型トラクター等)、建設関係機械(小は振動して地面をならす機械、ランマーというそうな からブルドーザやユンボ、公道走れない超大型ダンプ等)や、はたまた軍事用車両、家庭や工事現場にある発電機類等々考えても電動化は無理。
戦闘機、ヘリコプター、大型旅客機も電動化なんてありえない。
プレジャーボートや漁に使う小型船舶など、いくらでも身の回りに化石燃料が必要な設備がある。
つまり、インフラとしてのガソリンスタンドや類似設備は無くなる事は無いと思われる。そうであるならば、これを活用しない手は無いと思いますがね。
そして、乗用車以外のこれらからのCo2排出量を一気に下げることができる。
これらのCo2排出量がどんな程度なのかは調べた事は無いが、結構な量あるんじゃないかな。
そんなに期待できるなら石油大手がとっくにやっているとの意見もあるが、世界の流れとしての電動化が止まらなかった中では出来なかったというのが実際ではないかな。
今回、その流れにディーゼルゲートで無理にEV化に舵を切っていた欧州(戦犯のドイツ)が、自ら漸くちゃぶ台返しをしたことで、続々とe-Fuel参入企業が出てきそうと考えます。
そして、今回は「100%e-Fuel」と言っていたものが、数年後に「80%混合」「50%混合」「30%混合」の様になるのではないかな。
大体、自動車だけ「0」にしたって、大きな意義は無いよね。
コストにしたって、最終的には現在の価格の1.5倍から2倍程度なら需要はあると思うのだが。
 

1日前4返信いいね! 

 

・・・・・・・ 

 

https://business.nikkei.com/atcl/gen/19/00122/033000166/ 

 

 

まあ今の時代の趨勢として、 

 

・CO2ゼロのためにはBEVシフトは変わらないが 

・富裕層の高級車には合成燃料が使われることもある。 

・水素の活用(水素エンジン車、FCV)も視野に入れる必要がある。 

・生産・販売や諸インフラの整備にはそれ相応の注意と費用が必要となる。 

・しかし、それらを並行して開発してゆくことが大事なことで、 

・2026年の見直しには、どんな調整案が提示されるのであろうか。 

 

といった「ありきたりのない」話で終わっているようにも感ずのではあるが、 

そのいずれ(e-fuel、H2)に対しても、今後のブレークスルーを期待したいものである 

(続く)