カーボンゼロ、クルマの未来はどうなる?(100)

そんなわけで、トヨタダイムラートラックにとっては、今回の提携話は渡りに船であった訳であろう。 

 

 

トヨタ、日野自の不正で戦略立て直し 

2023/5/30 21:28池田 昇     

                           

会見冒頭で握手する、トヨタ自動車の佐藤恒治社長(左)とダイムラートラックのマーティン・ダウムCEO=30日午後、東京都港区(鴨志田拓海撮影) 

 

トヨタ自動車と独商用車大手のダイムラートラックが30日、それぞれの商用車子会社の日野自動車三菱ふそうトラック・バス経営統合で基本合意したのは、脱炭素に向けた次世代技術の投資負担が重くなる中、トヨタダイムラーがともに相互補完のパートナーを求めていたことにある。また、エンジンの燃費性能などを巡る日野自動車の不正で、同社が抜本的な立て直しを迫られたことも、新たなパートナー獲得へトヨタの背中を押した。 

 

4社のトップがそろった30日の記者会見では、自動車業界の課題である脱炭素や、電動化や自動運転などを目指す「CASE(ケース)」技術に対する取り組みについて、個社では限界があるとの共通認識が示された。 

 

トヨタ佐藤恒治社長は日本の商用車市場は「規模が小さく、(脱炭素・CASE対応は)単独では戦えない」と指摘。ダイムラートラックのマーティン・ダウム最高経営責任者(CEO)も、電池やモーター、水素など脱炭素への次世代技術の課題が多岐におよぶ状況で、「同時並行の開発を成り立たせるには劇的なスケールアップ(規模拡大)が必要」と述べた。 

 

トヨタは日野自に加え、国内商用車大手のいすゞ自動車にも出資。これまでも提携を通じて次世代技術の開発促進に取り組んでいたが、商用車市場で世界のトップクラスにあるダイムラーと組むことで、商用車分野の脱炭素化競争の備えをグローバルレベルに格上げする思惑だ。また、トヨタが脱炭素化技術で、特に力を入れている燃料電池水素技術についてはダイムラーも多くの知見を持つとされ、格好のパートナーと判断したとみられる。 

 

一方、日野自の小木曽聡社長は会見で、不正問題に関して、経営の改善に「手応えを感じているが、カーボンニュートラル(脱炭素)との両立は、単独では厳しい」と漏らした。トヨタにとっては、不正問題で日野自を核とする商用車分野の脱炭素戦略のシナリオが狂ったかたちで、ダイムラーとの提携による立て直しに動いた側面もありそうだ。(池田昇) 

 

https://www.sankei.com/article/20230530-S6UCF4AZEZJI5K5MYWQ24UAY3Q/ 

(続く)