■幻に終わったいすゞとの“合併”
だが、日野自のエンジン不正問題で、いすゞと日野の経営統合計画は吹き飛んでしまった。
次世代商用車を開発する新会社「コマーシャル・ジャパン・パートナーシップ・テクノロジーズ(CJPT)」には、トヨタ・日野自・いすゞのほか(2021/4月)、ダイハツ工業、スズキが出資(2021/7月)している。不正発覚で日野自を除名する厳しい処分を豊田章男トヨタ社長(当時)が下した。いすゞにしても、“不正の宝庫、日野”との統合に腰が引けたことは間違いない。
各社各様の思惑を見透かしたように、ダイムラートラックが動いた。昨年夏以降、ダイムラー側からトヨタに日野と三菱ふそうとの統合の話が持ち込まれた。
豊田章男氏は4月に佐藤恒治氏に社長の椅子を譲り、会長となったが、今回の“合併”の話は、豊田章男氏のマターとして進められたといわれている。
ダイムラーは米国や欧州で商用車を手掛けているが、日本とアジアでの事業は05年に傘下に収めた三菱ふそうに任せている。商用車も乗用車と同様に、電動化や自動技術など多額な投資が必要となる「100年に1度の変革期」のさなかにある。三菱ふそうも単独で生きるのは難しいと考えていた。
ダイムラーのマーティン・ダウム最高経営責任者(CEO)は記者会見で、こう述べた。
「将来のモビリティーの脱炭素化には水素が必要で、トヨタと協力できることは重要だ」。トヨタが持つ、燃料電池車(FCV)や水素エンジン車といった水素関連の技術力が魅力的だとアピールしたわけだが、「リップサービスの範疇」(ダイムラー以外の欧州の自動車大手の首脳)なのだろうか。
ダイムラーはトヨタに何を期待しているのか。突然の経営統合の本当の狙いは、まだ、見えてこない。=つづく
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/money/325845
この論考の要旨を、若干補足を入れながら、次の様にまとめてみる。
2000年代初頭より、日野自動車は排ガスや燃費性能の不正を始める。
2001年 トヨタは日野自動車の株式保有を50.1%にして子会社化
2005年 ダイムラー・クライスラーは三菱ふそうを子会社化
2007年 ダイムラー・クライスラーはダイムラーAGに改称
AktienGesellshaft 株式会社。今はMercedes-Benz Group AG
2019/3月 ダイムラーAGは持ち株会社構想を発表、傘下に
Mベンツ、Dトラック、Dモビリティの3社を置く計画
2021/3月 トヨタといすずの資本提携、5.2%ずつ出資。
2021/4月 CJPT設立、トヨタ・いすゞ・日野+7月にスズキ・ダイハツ
2021/6月 トヨタの小木曽聡氏が社長に就任、下義生氏は会長に。
2021/12月 ダイムラートラックホールデングスが正式に設立される。
2022/3月 日野自動車の排ガス・燃費不正が発覚、
いすゞと日野の統合計画ご破算となる。
2022/8頃 ダイムラー・トラックよりトヨタへ、(水素技術狙いで)
「三菱ふそう」と「日野」の統合したらどうか
(続く)