カーボンゼロ、クルマの未来はどうなる?(116)

これによると、トヨタダイムラー、そして日野と三菱ふそうの4社は環境対策を主眼として、水素技術を結集することにより、大中を問わずにトラックの環境対策や自動化技術の開発を共同で進めてゆくつもりのようだ。 

 

となるといすゞ・UDグルーブはどうするのか。 

 

いすゞは2021/3月にトヨタ資本提携をしているし、その前年の2020年にはホンダと燃料電池車の開発で提携しているし、ボルボとも商用車の開発で提携している。またエンジン開発については、米国のカミンズ社と協力関係にあるので、かなりの八方美人的だ。 

 

だから日野との統合も進むのかと思われたのだが、この八方美人はそんなことで制約を受けたくなかったようで、(多分)グズグズしているうちに日野の不正問題が発覚したために、幸か不幸か、日野・いすゞの統合話は頓挫してしまったわけだ。 

 

ダイムラーのように「どれだけ先を見て、物事を考えられるか」と言う着眼点の(いすゞとの)相違のなせる業とも考えられるが、如何。 

 

そんないすゞはどう動くのか。 

 

 

トヨタダイムラー提携、次の焦点 いすゞどう動く? 

2023年6月2日 11:55 (2023年6月2日 12:12更新)  

 

いすゞはホンダと共同開発した燃料電池トラック27年をめどに投入する 

 

トヨタ自動車ダイムラートラックが提携し、日野自動車三菱ふそうトラック・バス経営統合する。日本のトラックメーカーが2陣営に集約され、国内販売シェア首位のいすゞ自動車を取り巻く環境は大きく変わる。脱炭素に向け電気自動車(EV)などの開発コストが膨らむ中、いすゞがどう動くのかが次の焦点になる。 

 

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圧倒的なのは信頼性だ 

 

5月19日、いすゞの片山正則会長広島市にいた。目的は日本自動車工業会が主要7カ国首脳会議(G7サミット)に合わせて開いた脱炭素技術の展示会。トヨタやスズキなどと共同で研究した燃料電池車(FCV)やEVのトラックを報道陣に説明する中、「それで、御社の強みは」と聞かれた片山氏は冒頭のように言い切った。業界関係者はこう解説する。「そもそも嗜好品ではないトラックは差異化が難しいんですよ」 

 

独自性の出しづらい商用車業界では、各社の協調と競争が入り乱れる。技術開発連合コマーシャル・ジャパン・パートナーシップ・テクノロジーCJPT)」を設立して電動化の技術開発で協力しつつ、トラックやバスの販売現場では各社が真剣勝負でぶつかりあう。資本関係も入り組んでおり、トヨタは日野自の親会社であると同時に、競合するいすゞにも約5%出資している。 

 

トヨタいすゞの強敵をつくりあげてしまった 

 

商用車業界関係者はトヨタダイムラーの今回の提携をこう表現し、さらに各社の関係がもつれるとみる。世界の中大型トラックの販売台数は年350万台。うち、日野自・三菱ふそう連合は40万台程度を握るとみられ、トヨタの佐藤恒治社長はいすゞUDトラックス連合と同等の販売規模になるとする。トヨタが主導して国内の商用車業界を2陣営に分けた形だ。 

 

 

いすゞはこれまで状況に応じて交渉相手を変えながら、多くのメーカーと提携してきた。1971年には米ゼネラル・モーターズGM)の資本を受け入れ(06年に資本提携は解消)、スウェーデンの商用車大手ボルボとは大型トラックのEVや自動運転で提携する。ホンダとは大型トラックのFCV、米エンジンメーカーのカミンズとはエンジンの相互供給などで連携している。 

 

2000年代はじめ、いすゞが経営危機にあった際には、日野自との統合構想が浮上したこともある。いすゞから持ちかけたといい、バスの生産事業を統合したジェイ・バスも生まれた。 

 

「国内シェアの7割を握ってしまうので独占禁止法上難しいとの指摘もある」(SBI証券の遠藤功治企業調査部長)との声もあるが、統合構想は00年代後半にも再燃した。同じくトヨタが絵を描いたとされた。 

 

いすゞの元幹部は「常に業界再編の圧力にさらされてきた」と話すが、片山会長は「他流試合がなくなれば、井の中の蛙(かわず)になる」と多数の企業と組む戦略を肯定的に捉えている。トヨタの佐藤社長もいすゞと今後もしっかり協業していくとしている。 

 

巨額の脱炭素化投資負担や急伸する中国勢力との競争を迫られる中、いすゞが今後、自らをどう位置づけていくのか。次の一手が注目される。 

 

(淡海美帆) 

 

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https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC01DBJ0R00C23A6000000/ 

(続く)