いすゞがどう動くのか具体的な話を期待したが、この論考では、問題提起だけで尻切れトンボになっている。先の論考によれば、
「CASEに関するいすゞの強み」を聞かれた時のいすゞの片山正則会長の答えとしては、「圧倒的なのは信頼性だ」と答えざるを得なかったわけで、「水素に強い」とか「ソフトウェアに強い」とか「電子・電気の技術者が多い」などと言ったものが、いすゞにはなかったからである。小生の見立てでは、いすゞは単なる(と言ったら失礼になるが)大トラの製造会社なのである。今やCASEの領域に潜り込もうと、四苦八苦しているところなのではないのかな。その表れがホンダとの「燃料電池技術」での大型トラックの共同開発だったのでしょう。トヨタとは資本提携していても、そのため、トヨタとでは気が引けて嘗てOEMで関係していたので組し易しと見立てたホンダとの共同開発に走ったものと思われる。
いすゞは、大型トラックではホンダと提携し、小型トラックではトヨタと提携して、この「カーボンゼロ」の世界を泳ぎ渡ってゆこうとしている様に見えるのだか、如何。
その「Keyword」は、いすゞにはない「H2・Hydrogen、水素」だと考えているようだ。
大型トラックはホンダ、小型トラックはトヨタと水素がらみで提携する、とは少し虫が良すぎるようにも思えるのだが。
いすゞの八方美人的な振る舞いを見ると、「清水の舞台から飛び降りる」的なチャレンジは、無理だったかもしれない、と小生には感覚的にそう思えてしまう。だから日野との協業と言うか統合には飛び込めなかったのではないのかな。千載一遇のチャンスを失ったともいえる。
いすゞが大型トラックでは、トヨタでなくてなぜホンダと水素で提携したのには疑問が残るところであるが、1993年に乗用車の自社開発を止めた時には、ホンダからOEM供給を受けていたという経緯があるからでしょうか。
ここで「いすゞ自動車」の成り立ちを調べてみる。
Wikipediaによれば、
1916年(T5) 東京石川島造船所が自動車製造の調査研究と試作を開始
1918年 東京石川島造船所が英ウーズレー社と提携、自動車製造を開始。
1929年 石川島自動車製作所として独立、ウーズレーとは'27年に解消済み
1933年 ダット自動車KK.と合併し、自動車工業株式会社と改名する。
1934年 小型車部門が分離し日産自動車となり、スミダ号をいすゞに改名。
1937年 東京瓦斯電気工業KK,と合併、東京自動車工業kk.と改名。
1941年 ヂーゼル自動車工業kk.と改名。
1942年 日野製作所を分離、日野重工業kk.となる。
1949年 いすゞ自動車株式会社と商号変更する。
1966~1969年 この間富士重工、三菱重工と業務提携し解消している。
1971(S46)年 GMと資本提携(~2006/4)、いすゞ株34.2%を取得。
1986(S61)年 富士重工(現スバル)と北米生産合弁契約調印
1989(H01)年 SIAが車両生産開始。スバル・イスズ・オートモーティブ
1993(H05)年 小型乗用車の自社開発・製造を中止。ホンダからOEM供給のみ
1990年代 経営危機でリストラを繰り返す。
OEM供給関係
スバル レガシー → いすゞ アスカ2代目 1991~1993年?
ホンダ アコード → いすゞ アスカ3,4代目 1994~2002年
ホンダ ドマーニ → いすゞ ジェミニ 1993~2000年
ホンダ ホライゾン← いすゞ ビックホーン 1993~1994年
ホンダ ジャズ ← いすゞ ミュー 1993~1994年
OEMは日産他とも実施している。
2002(H14)年 SUV(B.ホーン、ミュー、ウィザード)製造販売中止
2004(H16)年 ジェイ・バスがいすゞと日野のバス部門を吸収合併
2006~2007(H18~19)年 大型バス不正車検
2006(H18)年 4月、GMいすゞ株売却、1600ccDieselEG共同開発のため
11月トヨタと資本提携、5.89%の出資('18年解消)
2010(H22)年 大中型トラック年間販売台数で、日野を抜きトップに立つ。
日産よりOEM供給のワゴン生産終了、乗用車から完全撤退
2017(H29)年 4/9創立80周年←東京自動車工業KK.より。
2018(H30)年 8月トヨタとの資本提携解消(D-EGのニーズ減少のため)
2019(R01)年 5月米カミンズとパートナーシップ合意。
2020(R02)年 ホンダとFC大型トラック共同研究契約締結。
10月SwedenボルボGと戦略的提携、同保有のUD株全株取得
2021(R03)年 3月トヨタと再度資本提携(5.2%づつ保有)
2022(R04)年 日野自動車のEG排ガス・燃費不正発覚
いすゞ大・中型トラック国内販売で10年ぶりに首位
いすゞの年表は以上のような塩梅であるが、日産も日野もいすゞの前身から分かれたという事にはびっくり。
ホンダとは乗用車系の車両のOEMのやり取りで'90年代初めから関係があったために(かどうかは知らないが)、大型トラックの燃料電池化での共同研究がやり易かったのかもしれないとは思うが、早くから資本提携をしていたトヨタとは近づかなかったのは何故だろうか、やや不信感が残るものである。
このトヨタとの再度の「異例の資本提携」の理由も、CASEの荒波を乗り切るためのものであった。
佃 義夫:佃モビリティ総研代表
ビジネスモビリティ羅針盤~クルマ業界を俯瞰せよ 佃義夫2021.3.26 4:27
(https://diamond.jp/category/s-mobility_compus)
資本提携を発表し、記者会見を行うトヨタ自動車の豊田章男社長(中央)、いすゞ自動車の片山正則社長(右)、日野自動車の下義生社長(左)=撮影日3月24日 Photo:JIJI
いすゞ自動車とトヨタ自動車は24日、相互出資による資本提携を発表した。両社は、ともに5.2%を出資し合うことになった。周知の通り、両社は2006年から2018年の解消まで資本提携の関係にあった。この異例の関係づくりに何があったのか。
24日、片山正則いすゞ社長、豊田章男トヨタ社長、下義生日野社長の3人、いすゞ・トヨタ・日野3社のトップが並んで緊急会見を行った。
いすゞ・トヨタの再度の資本提携の締結とともに、日野を加えた3社によって小型トラック領域を中心に電気自動車(EV)・燃料電池車(FCV)・自動運転・コネクティッド技術で協業していくことになった。
3社の共同出資で「コマーシャル・ジャパン・パートナーシップ・テクノロジーズ」を設立し、商用車のCASE技術で協業し、物流分野でのカーボンニュートラルへの取り組みを促進していくという。
(続く)