カーボンゼロ、クルマの未来はどうなる?(115)

それにしてもダイムラートラックとしては不正に染まっている日野との経営統合を提案するとは、よい度胸である。いすゞもしまったと思っているかもしれない。なんと言ってもトラックでの電動化、自動化、ICT化」を進めるには規模がものを言うから、「カーボンゼロ」の世界で生き抜くためには、並大抵の発想では成り立たないものと思っているのではないのかな、ダイムラーも。 

 

ここで日本のトラック4社の国内販売台数をか掲げておく。 

 

              2019    2020    2021    2022年  

いすゞ自動車 29,512  28,833  28,912  20,191台 

UDトラックス 10,227   9,584   9,209   9,606台 

日野自動車 37,517  33,199  31,997  15,547台 

三菱ふそう 15,912 14,794  13,618  10,529台 

 

 

これは、 

メーカー別販売台数 

http://www.jada.or.jp/data/year/y-lm-hanbai/y-lm-maker/  

メーカー別販売台数 | 統計データ | 一般社団法人日本自動車販売協会連合会 (jada.or.jp) 

より拝借している 

 

これによると日野自動車は国内ではダントツのトップに位置するトラックメーカーだったのではないか。ただし不正で得た位置だったのかもしれない 

 

日野と三菱ふそうが統合することにより、日本国内はいすゞ・UDグルーブ日野・三菱グルーブに2分されることになる。 

 

日野と三菱ふそうの両社は2024年3月期最終契約を締結し、2024年中に統合を完了させたいと言っている。 

 

今年の5月30日の共同記者会見では、トヨタダイムラーはそれぞれ次のように言っている。 

 

トヨタ自動車社長・CEOの佐藤恒治氏 

 

 共同会見では各社トップが登壇。トヨタ自動車 社長 CEOの佐藤恒治氏からは、今回の協業における全体的な狙いが説明された。佐藤氏は「この協業の背景にあるのは、商用車の未来を共に作るという私たち4社の強い思いです。人や物の移動を通じて暮らしを支える商用車は、まさに社会インフラとも言える重要なモビリティであり、社会システムに組み込まれることで移動の価値をさらに高めることができます。カーボンニュートラルに向けては、世界の自動車CO2排出量の4割を占める商用車を、環境に優しいモビリティへ進化させていくことが不可欠です。すなわち、商用車の新しい未来を作っていく挑戦が、豊かなモビリティ社会の創造に重要な役割を果たしていきます。その鍵を握るのが、電動化や自動運転などのCASE技術です。CASE技術は広く普及してこそ社会の役に立ち、そのためには技術開発力が必要です。そのようなCASE時代を生き抜く上で、日本の商用車市場は世界と比べて規模が小さく、各社が単独で戦うことは難しい状況です。豊かなモビリティ社会を創造していくためには、競争のみならず、みんなで力を合わせて未来を作っていくことが強く求められています」と、カーボンニュートラルの実現に向けて協業の重要性を説いた。 

 

 

 4社が協力する領域については「こうした思いで、今回、4社での協業を通じて、CASE技術の普及を加速していきたいと考えています。三菱ふそうと日野は統合により、両社のシナジーを高め、開発、調達、生産における事業の効率化を図ることで、CASE技術に取り組む事業基盤、競争力を強化してまいります。ダイムラートラックとトヨタは両社の強みを持ち寄り、CASE技術で統合後の会社を支えながら、両社の間でもさらなる技術力の強化に取り組んでまいります。この4社が集うことで、新たな未来の可能性も広がってまいります。中でも、水素領域の取り組みは、豊かなモビリティ社会を実現するために4社で力を入れて協力していく大きなテーマだと考えています。ダイムラートラックとトヨタは、早期から水素エネルギーの持つ可能性に着目し、燃料電池水素エンジンの技術開発を積極的に進めてまいりました。そして、普及に向けて、商品の実用化や水素インフラの整備にも取り組んでまいりました。今後、三菱ふそう、日野も含めた4社で水素モビリティの普及を商用車から加速させていきたいと考えています」と、水素領域での取り組みに期待を寄せた。 

 

 また、「こうした未来に共に取り組んでいくためにも、まずは三菱ふそうと日野の統合により、世界で戦える事業基盤を整えていきます。そして、健全な競争を通じて、よりよい商用車の未来に貢献してまいります。ダイムラートラックのダウムCEOとは、商用車の未来を変えていくこと、CASE技術の普及にはスケールが必要であること、そして未来はみんなで作るもの、こうした思いと価値観を共有しながら、パートナーシップのあるべき姿について議論を重ねてまいりました。そのプロセスの中で、お互いのビジョンを確認し合え、大変有意義な話し合いをできたと思っています」と、三菱ふそうと日野が統合する狙いが語られた。 

 

 

ダイムラートラックCEO マーティン・ダウム氏 

 

 ダイムラートラックCEO マーティン・ダウム氏からは、商用車においてもカーボンニュートラルへの対応が迫られる状況が語られる中で、「ゼロエミッションに向けて加速していく中で、1つ大きな課題があります。すなわち、そのためには投資が必要だということです。私たちの業界の変革を意味するのは、同時に複数の新しい技術に投資しなくてはならないということです。バッテリ、水素の燃料電池、または水素エンジン。これらすべて同時に行なうというのは、この業界におけるトップ企業にとっても非常に大変なことです。この同時並行の技術開発を経済的に成り立たせる方法は1つしかありません。規模の経済スケールです。スケールこそが鍵なのです。投資を行ないより大きなスペースで広げていくことが不可欠です。そして私たちは今日、大胆な行動に出ています。私たちは、日本の商用車大手3社のうち2社の力を結集させます。そして、このことが劇的なスケールアップにつながります。三菱ふそうと日野の統合事業は、大型トラックにおけるダイムラートラックのすべての技術にアクセスすることが可能になります。この統合はまさに決定打になりえます。私たちが全く同じ分析を行ない、同じビジョンを持つパートナーに出会えたということを、本当にうれしく思っています。本日発表した内容は、単に私たち自身が企業として成長する可能性を秘めるだけではありません。真の国内トップ企業を作ることは、日本の経済を活性化する可能性があるのです。お客さまの成長に貢献するだけではなく、強固な製品ラインアップを作り上げることができます。ゼロミッションの輸送への変革を加速するために、今日の協業は4社すべてにメリットをもたらします」と、スケールによるメリットが語られた。 

 

 

なお、詳しくは下記の論考を参照願う。 

 

 

水素領域で4社協力も ダイムラートラック、三菱ふそう、日野、トヨタが共同記者会見 三菱ふそうと日野の統合後ブランドは存続 

編集部:椿山和雄 2023年5月30日 21:43 

https://car.watch.impress.co.jp/docs/news/1504687.html 

(続く)