カーボンゼロ、クルマの未来はどうなる?(121)

日野自動車三菱ふそうトラック・バスの両社は、経営統合を進めるためのプロジェクトチームを立ち上げたようだ。 

 

先ずは、開発・調達・生産・販売などの実務面から検討に着手したのだが、販売は両ブランドを維持する様だ。なんと言っても、統合のメリットを出して浮いたお金で次世代の技術開発を進めてゆかなければならないからだ。当座の次世代技術とは、EVとFCV(燃料電池トラック)の開発である。 

 

物流の常としては、近距離配送長距離輸送とでは、全く様相は異なっている 

 

近距離輸送・宅配では、小型トラック、長距離・遠距離輸送では、大中型トラックによる拠点間物流が必要となるので、この大小のトラックは(ある意味)全く別物となる。 

 

その意味では、長距離・大(中)型トラックでは日野自動車が、近距離輸送用の中・小型トラックでは、どちらかと言うと三菱ふそうトラック・バスの方が得意とするようだ。ただしダイムラートラックとしては大トラのエンジンも得意としているので、夫々どんなエンジンを使ってゆくか、などと言ったことも決めてゆかなければならない筈だ。 

 

その上物流上での「カーボン・ゼロ」を目指すためには、EVやFCVを開発して夫々の小型エンジンはEVに、中大型エンジンはFCVへと置き換えてゆかなければならない訳だ。統合の効果を早く出して、浮いた資源をそれらのCASE技術の開発に回さなければならない、と言うこと。この分野では、トヨタダイムラーも、統合会社を十二分とは言わないが、支援できる技術を持ち合わせているので、好都合である。 

 

このような個別具体的な案件を決めたそのうえで、どのようにこの二社を統合してゆくか、と言った問題が横たわる。横たわると言わざるを得ないわけは、日野自動車の不正問題が存在しているからである。まあダイムラーはそれをチャンストヨタサイドの弱みと見たわけではあるが、それなりの障害が横たわるようである。 

 

米国では現在、司法省の調査が行われているようで、制裁金を科せられる可能性があり、更には、集団訴訟も起こされているので、日野自動車の金銭負担が高額になる可能性も存在しているのである。そのため、新設される持ち株会社の株式との交換比率がキチンと定まらない可能性が予想されている 

 

これは厄介なことである。三菱ふそうトラック・バス日野自動車は対等な立場で統合するとになっているようなので、この金銭負担はどれほどになるのかは今のところ判明していないが、影響があることは確実だ。 

 

とは言うものの、三菱ふそうトラック・バス日野自動車、その親会社たるダイムラートラックとトヨタは、トラック業界としてCASE革命に対して、どのように挑んでゆくのかは思案の真っ最中ではなかったのかな。丁度そんなときの統合話であり、まことに時宜を得た話であった筈だ。 

 

EVなどの電動化、FC・燃料電池と水素技術のトラックへの適用、ICT・コネクテッド技術、自動運転技術などのディジタル対応など、金の掛かることだらけである。 

 

将にトラックメーカーにとっても、規模がものをいう時代なのである。 

 

 

トヨタ、日野、ダイムラー三菱ふそう統合の理由雑誌に載らない話 

2023.05.31Auto Prove 編集部 

 

ダイムラートラック、三菱ふそうトラック・バス日野自動車トヨタは2023年5月30日、緊急会見を開催し、トヨタダイムラートラックが両社統合の持株会社(上場予定)を設立し、株式を同割合で保有することを発表。その100%子会社として日野自動車三菱ふそうトラック・バスを統合し、燃料電池や水素エンジン開発、CASE技術開発で協業し、競争力を加速させることに合意を発表した。 

                       

左から会見に臨んだ日野自動車・小木曽CEO、トヨタの佐藤CEO、ダイムラートラック社のマーティン・ダウムCEO、三菱ふそうトラック・バスのカール・デッペンCEO 

 

つまり、三菱ふそうトラック・バス日野自動車は対等な立場で統合し、トラック、バス商用車の開発、調達、生産分野で協業し、グローバルで競争力のある日本の商用車メーカーを狙う 

 

ただし市場ではそれぞれのブランドで販売を行なうことになる。この日野と三菱ふそうの2社が統合されることで、開発コスト、部品の調達コスト、そして生産ラインの統合などで合理化が実現することはもちろん、今後のEVトラック、バスの展開商用車用の燃料電池技術なども共同開発、共用化が期待できる。 

                  

(続く)