■独ダイムラーも千載一遇のチャンス
クルマ情報サイト「Motor-Fan.jp」が国際水素連合について、かなり踏み込んだ書き方をしている。
日野自動車の小木曽聡社長(トヨタ自動車出身)は「カーボンニュートラルや環境への対応は単独では難しい。(トヨタ、メルセデスベンツ・グループ傘下のダイムラー・トラックを含めた)4社の枠組みは千載一遇の機会だ」とした。日野は昨年、エンジンの燃料や排ガスをめぐる認証不正が発覚。23年3月期決算では顧客や部品メーカーへの補償などの特別損失が響き、1100億円超の最終赤字となった。3年連続の赤字を計上し、経営の再建が急務となっていた。
ダイムラーはトヨタのFCVの知見も必要としている。日野が不祥事に揺れるタイミングでトヨタに声をかけたのは偶然ではない。ライバルの危機や隙を見逃さないのがダイムラー流だ。
その意味でも、ダイムラーにとっても4社の枠組みは千載一遇のチャンスなのである。
(有森隆/経済ジャーナリスト)
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/money/325909
ダイムラーにとっても(現Mercedes.Benz グループ)この枠組みは「千載一遇のチャンス」と言っているように、商用車も乗用車と同様に脱炭素のための電動化や自動運転などの技術開発には相当大きな投資を必要としている。
そのためには単独で生き残るのは難しい、と言うよりも不可能に近いものであり、更にその技術開発には水素が必要となってきている。そのためダイムラーとしては、トヨタ・日野自動車連合が丁度良い提携相手とみなしたわけだ。
しかも日野の不正が発覚して危機に面している時こそ、ダイムラーはチャンスと見ていたということではないのか。だから「千載一遇のチャンス」だったわけだ。両社は早速統合の準備に取り掛かっている。
日野・ふそう、統合へ企画チーム設置 商品共通化を検討
自動車・機械2023年7月21日 22:00 [会員限定記事]'
日野自動車と三菱ふそうトラック・バスは2024年12月末までに予定する経営統合に向けて、両社でプロジェクトチームを立ち上げる。月内にもチームでの作業に着手し、商品やエンジンの共通化を含めた開発や生産の統合について具体的に企画する。統合効果を捻出し、電気自動車(EV)や燃料電池車(FCV)の開発に経営資源を振り向ける。
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統合する両社はまず、開発、調達、生産、統合会社の構成などの領域でプロジェクトチームを立ち上げる。その中で、エンジンや商品の共通化を検討する。三菱ふそうは国内向けトラックのエンジン開発を国内で独自に手がけるが、大型では親会社の独ダイムラートラックが製造するエンジンを採用している。大型向けではダイムラー製エンジンを日野自が活用することも視野に入る。
トヨタ自動車とダイムラートラックが電動化や自動運転といった次世代技術の開発で提携し、それぞれの子会社である日野自と三菱ふそうが経営統合する。4社が5月、トヨタとダイムラーが共同出資して新たに持ち株会社を設立し、日野自と三菱ふそうを完全子会社にすると発表した。
JPモルガン証券の岸本章シニアアナリストは日野自とふそうの国内での統合効果について「物流や調達で、2〜3年のうちに年100億円前後の効果が出るだろう」とみており、浮いた経営資源を研究開発に振り向ける。トヨタやダイムラーの技術支援も見込める。
両社が提携を急ぐ背景の一つにEVやFCVなど多様な「新エネルギー車」の開発が必須になっていることがある。都市部の配送ではEVが優位性を発揮できる部分も大きいが、大きな荷物を長距離運送するような大型トラックの領域では、より大きな出力が出せる水素エネルギーの活用が有望視されている。
EVとFCVの開発を並行して進めるには、多大な開発費が必要だ。日野自の小木曽聡社長は「カーボンニュートラルへの対応は単独では難しい。4社の枠組みは千載一遇のチャンス」と話す。三菱ふそうのカール・デッペン最高経営責任者(CEO)も「補完的な協力ができ、東南アジアで力を合わせてカーボンニュートラルに貢献したい」とし、統合による経営規模の拡大で巨額の投資に対応する構えだ。
調査会社マークラインズによると、22年の国内の中大型トラック市場に占める日野自と三菱ふそうの合計シェアは4割。インドネシアでは7割を占め、タイなど周辺の東南アジアでもブランドは浸透している。規模拡大でEV・FCVの開発を急ぎ、環境車が主流になってもこの市場を死守する考えだ。
一方、統合の障壁になりそうなのが、日野自のエンジン不正の影響だ。米国では司法省の調査が続いており、制裁金を科される可能性があり、集団訴訟も起こされている。潜在的な金銭負担について、臨時報告書では「現時点で合理的に見積もることは困難」だが、「重大な悪影響を及ぼす可能性がある」と記されている。
日野自と三菱ふそうの株主は、新設する持ち株会社と株式を交換するとみられている。その場合の交換比率は、日野自が抱える潜在的な金銭負担のリスクを織り込んで調整することになる。金銭負担が数千億円規模になる可能性も指摘されており、この統合比率の決定が難航する可能性がある。
(淡海美帆)
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https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC088DQ0Y3A600C2000000/
(続く)