カーボンゼロ、クルマの未来はどうなる?(147)

 コロナ禍の前のことだが、愛知県下にある中堅の自動車部品メーカーの経営者に聞くと「設計変更の依頼にしても、突然、夕方になって連絡を受けて、納品は明日の朝までという急な要求もあり、そのつど現場では大慌てで夜勤のためのシフトの組み替えをやらなければならない」と、ため息まじりに話した。 

 

 さらに、日野とダイハツは、歴代社長を含めてトヨタから送り込まれた人材が経営の中枢を担う。ダイハツの不正行為を発表した記者会見で、トヨタ出身の奥平総一郎社長も「(衝突試験の)担当の人間に、かなりのプレッシャーがかかっていた可能性がある」との見方を示したことも聞き逃せない発言である。 

 

 トヨタグループ、およびその傘下の部品メーカーは、従来から結束力の強さを身上としていた。が、その結束のベースにあったのは、お先棒をかつぐような忖度の類いではなく、何かが起こったらお互いにいつ袂を分かってもいいというほどの緊張関係だった。 

 

 ところが、近年はそうした緊張関係が薄らいでいるようにも感じる。メディアを巻き込んで作り上げた世間の評判とのズレもかなり大きいようで、現在のトヨタグループに蔓延する事大主義強者に追随して自己保身を図ること)への懸念を抱く関係者も少なくない。 

 

 グループ全体で再発防止に向けての改革に取り組むトヨタ本体でも、内部では微妙な混乱が起こり始めている。鳴り物入りで発売した電気自動車「bZ4X」だが直後に品質問題が露見、その解決に数カ月も要したのは、その典型的な例と言えるだろう。 

 

トヨタへのご意見番が存在しなくなった? 

今のトヨタグループには、耳の痛い話でもまずは聞き入れるという意識改革を推し進めることが重要だ      

 

 トヨタグループにとって一番大事なのは、自身の姿である立ち位置を正当に判断することである。 

 

 もちろん自分のことはなかなか自分ではわからないものだが、「トヨタは正しい」という虚像が先行したせいか、苦言を含めて本当のことをトヨタに直言する“ご意見番”が存在しなくなったことも事実。 

 

 本当のことはわかる人にだけ言うというのが処世術の基本のようだが、耳を貸さない相手にモノを言わなくなるのは当然のこと。グループの中に閉じこもって悩むより、外部とのコミュニケーションを再構築することが解決の糸口をつかむことにもなるだろう。 

 

 リーマンショック以降のトヨタはある意味で強運に恵まれてきた。大規模リコール問題など危機に直面することがあってもそれが悪い結果につながらず、ライバルが次々に失策を犯したこともあって、世界ナンバーワンの座は強固なものになっている。 

 

 大事なことは、その成功が実力なのか、まぐれなのかを虚栄心を排して素直な目で見定めることだが、頂点を極めると成功体験が頭をよぎり、自らを見つめ直すのは至難の業である。 

 

 しかし、4月からスタートした新体制に求められているのは、豊田会長のリーダーシップに頼るばかりではなく、会社全体で司令塔としての責任の重さを痛感し、耳の痛い話などを聞き入れる意識改革を徹底的に推し進めることではないだろうか。 

 

 それには会社としての器の大きさという点について、もう一段成長する必要もあるが、それが熟した時、初めてグループが本当の結束を取り戻し、強さが本物となるだろう。
(文/福田俊之 

 

https://bestcarweb.jp/feature/column/679470?prd=3 

 

 

2023年4月に社長に就任し同年6月に代表取締役社長となった佐藤恒治新社長にとっては、有体に(ありのままに)言えば、豊田章男会長に頼らずに、自分の責任で自分が正しいと思うことを実行してゆくことが、最も大切なことである、と上記の論考は結論付けている様に、小生には読めたのであるが、それが『耳の痛い話などを聞き入れる意識改革を徹底的に推し進めることである』と言うことに繋(つな)がることなのであろう。 

 

しかもこれらの品質不正は 

豊田章男現会長の社長時代に発生しているものである。 

(続く)