カーボンゼロ、クルマの未来はどうなる?(148)

佐藤恒治新社長には責任はないと言うわけではないが、「いいクルマをつくった人」が「良い経営をする」とは限らないのである。「いいクルマをつくった人」の下には、「いい経営をする人」を付けなければいけなかったのである。 

 

「いいクルマをつくった人」を「クルマ屋」と呼ぶのであれば、その許には「良いマネージャー」がきっといた筈なのである。だから「良いクルマ」が出来たのである。 

 

「いいクルマをつくる人」が「良いマネージャー」であれば、それに越したことはない。豊田章男現会長はきっと、この両方を兼ね備えていたと思われるがそのため、彼の許には「いいクルマをつくる人達」と「いい経営をする人達」が、沢山いたものと思われる。だからトヨタは、繁栄していったのである。 

 

幸いにして豊田章男氏は、今まではそれほど暴走はしなかった。だからトヨタはうまくいっていたのである。 

 

だが、こういうことをしたらダメだ。会社経営もダメになってしまう。 

 

週刊新潮」2023年6月24号(P29)には、次の様な記事がある。 

 

・・・その契機となったが、'21年2月19日のできごとだ。働き方改革で優れた会社を表彰する日経主催の表彰式が、帝国ホテルで開かれた。 

 このイベントに、大賞を受賞したトヨタの章男氏が突如現れ、「うちを批判する新聞社がうちを表彰するのか」と悪態をついたのだ。日経の岡田直敏社長(当時)と険悪な雰囲気になり、以来、トヨタは日経を取材から遠ざけた。 

 気に食わない新聞には広告も出さず、取材から遠ざける---。「独裁者」と化した章男氏の思いつきと、それにより忖度で、世界有数の企業がきしみ始めている。・・・ 

 

 

章男氏は「クルマ屋の限界」と言う言葉を言い訳気味に使っているが、それでは困るのである。 

 

いいクルマをつくらせる人」であると同時に、「いい会社を作り上げる人」でもありたいものである。こんな体たらくでは、いいクルマも作れなくなってしまう。 

 

もし悪態をつきたいと思ったのであれば、このような公式の場では控えるべきであった。何よりも先ず、何らかの理由をつけて、その表彰を辞退することをするべきであったのでしょう。そしてその理由に、「トヨタは日経に批判されているから受賞資格はない」と云って、悪態をつけばよかったのである。ただし、どんな批判であったかはしっかりと確認し理解しておくべきものである。 

 

この論考には、「・・・どの不祥事もトヨタの言うことを聞かなかった結果起こったのではなく、語弊を恐れずに言えば、むしろトヨタの言うことを聞いたから起こったのだ」と書かれているように、トヨタとしては知らず知らずのうちに、「いい会社、いい経営をする」ことから遠ざかってしまったのかもしれないのだ。 

 

このことをよく考えて、今後とも会社を動かしてゆくことが肝要となろう。 

 

日野もダイハツも歴代社長はトヨタからの人間であったわけで、本体が偏っていれば派遣された人間もそれなりに偏っていたのであろう。これは恐ろしいことである。 

 

さて話は飛ぶが・・・、トヨタは現在「脱炭素」のために、水素に力をそそいており燃料電池の他に水素を直接燃焼させる水素エンジン車にも力を注いでいる。 

しかし、それには水素ステーションの普及が必須である。折角FCVの世界初の量産化を成し遂げたのであるから、自ら水素ステーションの設置にチャレンジしてもよかったのではないのか。テスラは自らテスラ規格の充電ステーション網をつくっているではないか。いまはその充電規格が標準になってしまっている。 

 

東京とか大阪とかのある範囲でもよいが、トヨタとしては、水素スタンド網を造り、その範囲では水素を充填できる様にしてFCVの利便性を高めておくようなトライも必要だったのでしょう。そしてそのような範囲をまた別の場所にも作ってゆく、と言った感じだ。テスラが良い例ではないのか。 

 

トヨタはもっとチャレンジングであってしかるべきである。 

 

また「アリーン」と言う車載OSの開発にも苦戦しているようだが、VW始めFORDなどのどの自動車メーカーもその開発には苦労しているようなのだ。 

 

クルマのスマホ化を進めている、と言うのであれば、いっそのことクルマそのものを「スマホ」にしてしまった方が簡単ではないか。 

 

クルマにスマホをセットして、大きな画面で、(スマホを)自由に使えるようにすれば、簡単にクルマをスマホ化できるのではないのかな。 

 

どんなスマホでも使えるようにスマホをカセットにセットして、クルマに装着して使えればよいのである。 

 

もちろんクルマ独自の機能もあってよいのであるが、全ても網羅したOSを造るのはとても難しいのではないのかな。 

 

 

さて、一寸古いが2021年3月の次の論考を参照願って、この話を終える。 

(続く)