ALPS処理水放出と習近平の凋落(42)

米中関係と「トウキデイデスの罠」 

 

2021年9月24日付米外交専門誌フォリーン・ポリシーは「衰退する中国、それが問題だ」と題する論文を掲載した。執筆したのはジョンズ・ホプキンズ大学のハル・ブランズ特別教授タフツ大学のマイケル・ベックリー准教授だ。 

 

ハーバード大学政治学グレアム・アリソン氏が「トウキデイデスの罠」を指摘して以来、米中関係はしばしば、紀元前5世紀のギリシャの覇権国スパルタと新興大アテネの間で繰り広げられたペロポネソス戦争に例えられてきた。 

 

古代ギリシャでは、大国が衰退を始めたとき、戦争が起こった…Photo/gettyimages     

 

古代ギリシャの歴史家であるトウキデイデスは、「アテネの力が徐々に強大となったことに驚いたスパルタが戦争に踏み切った」ことが戦争の原因と書いたが、ブランズ氏らによれば、「国力で劣勢に立たされ始めたアテネが勝利の機会を失う前に開戦に踏み切ったことが戦争の本当の原因だ」という。 

 

台湾有事という「中国の軽率な行動」 

 

興大国はパワーが拡張し続ける間はできる限り目立たずに行動し、覇権国との対決を遅らせるが、これ以上の発展を期待できなくなると「挑戦の窓」が閉ざされる前に果敢に行動し始めるというわけだ。 

 

現在の中国は当時のアテネと同じだとするブランズ氏らは、2年前に「中国は今後10年間、より大胆かつ軽率に行動する」と警告を発していたが、その「予言」が現実になりつつある。 

 

米国は再三にわたって中国に対して軍事対話の再開を呼びかけているが、中国側の対応は「暖簾に腕押し」の感が否めない。 

 

気になるのは、台湾を統一するために中国が武力を行使するリスクの高まりだ。 

 

南シナ海の異変がもたらす「日本経済へのダメージ」 

 

中国はこのところ、フィリピンが実効支配する南シナ海の2つの島に対する軍事的圧力を強めているが、背景には台湾問題があると言われている。 

 

地理的に台湾に近く、米国との軍事協力を強化しているフィリピンの存在が、中国が武力で台湾を統一する際、大きな障害になりかねないからだ。 

 

有事に備える台湾軍の演習 Photo/gettyimages   

 

南シナ海国際的な海上物流網において重要な役割を果たしており、両国間の緊張状態がエスカレートすれば、日本経済も深刻なダメージを受けることになるだろう。 

 

日本も中国の攻撃対象に入っている可能性がある。 

 

中国将校が語った「不気味な発言」 

 

中国軍の現役中将は、12月に入って「台湾への武力侵攻時に尖閣諸島も作戦対象となる可能性がある」との異例の発言を行っている(12月9日付共同通信)。 

 

台湾有事は日本有事」なのだ。衰退期に入った中国が、日本を巡るアジアの地政学リスクを高めないことを祈るばかりだ。 

 

さらに連載記事『習近平、打つ手なし…!中国製EVが「バカ売れ」するウラで、中国で「EV墓場」が大問題になっていた!』では、深刻化する中国経済の実情をさらに詳しくお伝えする。 


https://gendai.media/articles/-/120941 

 

 

 

中央経済工作会議」では、習近平はからきしダメであった。「逃亡した」とのうわさまであるのである。事実、習近平は工作会議の二日目の12月12日には一日欠席してベトナムハノイに飛んでいるのだ。これは一種の「責任逃れ」ではないか。 

(続く)