ALPS処理水放出と習近平の凋落(43)

中央経済工作会議」では、習近平はからきしダメであった。「逃亡した」とのうわさまであるのである。事実、習近平は工作会議の二日目の12月12日には一日欠席してベトナムハノイに飛んでいるのだ。これは一種の「責任逃れ」ではないか。 

 

 

中央経済工作会議から習近平が「逃亡」! 李強も「責任逃れ」  

愛華中南海ディープスロート」第13回 

愛華  2023.12.21 

 

重要会議を欠席してベトナム 

 

中央経済工作会議」(2024年の中国のマクロ経済政策を決める会議)が12月11日から12日まで、北京で開かれた。この経済に関する最も重要な会議に、習近平主席を含む7名の党中央政治局常務委員が全員出席し、習主席が重要講話を述べたと、新華社は報じた。 

 

同じ12日の正午、習主席は夫人を伴いベトナムハノイ市に到着したとも新華社は報じている。ベトナムに到着した習主席は熱烈歓迎を受け、午後にはベトナム共産党の最高指導者のグエン・フー・チョン書記長と会談したという。 

 

以上の日程から、不思議なことがひとつ浮き彫りなる。つまり、習主席はベトナム訪問のために、「中央経済工作会議」を一日欠席したのだ。これほど重要な会議を途中から抜け出すとは、極めて異例の出来事だ。 

 

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いまの中国で、習主席に逆らえる幹部はいない。「中央経済工作会議」の日程も、習主席の鶴の一声で決められたはずだ。2日間とも出席すべきなのに、初日だけ参加し、2日目はベトナムへ飛び立った。 

 

ベトナムを重視するためにとった行動とも思えるだろうが、実際に習主席がベトナムで受けた待遇はそれほどではなかった。熱烈歓迎が報じられたが、中国とベトナムの亀裂が透けて見えた。 

 

中国のCCTVの放送では見られない画面が、ベトナムのVNewsなどの放送では流れている。ベトナムが主催した歓迎宴会では、習主席は自ら立ち上がってチョン書記長に乾杯を求めた。チョン書記長は乾杯には応じたが、立ち上がりもせずに座ったまま。すぐ背中を習主席に向けた。 

 

習近平ベトナムに向かった理由 

 

習主席のこの動きは、中国では「敬酒」という。つまり相手に乾杯を捧げて、敬意を示すために行われる。中国の最高指導者が他人から「敬酒」される画面はよく目につくが、習氏が自ら他国の指導者に「敬酒」したことはあまりない 

 

11月の米国訪問(サンフランシスコAPEC)の際には、中国から米国に格式や形式に対する注文が、かなり多かった。中国外交部(外務省)は首脳会談に応じる代わりに、米国が習主席に敬意を示すよう要求した。もちろん拒否されたものもあるが、習氏のメンツはある程度は保たれた 

 

中国は、大国である米国に対しても、ここまでうるさかった。ベトナムでも当然、大国の首脳としてふるまいたがっていたことだろう。しかし、そうはできなかった。 

 

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習主席がべトナムに向かったのは、中国経済が危いからだ。また「中国経済工作会議」を途中から抜け出したのは、経済に関して責任逃れをしたいからと見える。会議の最後の決議の時に不在ならば、決定した政策に責任が生じにくくなる。もし来年の中国経済がボロボロなら、決議を行った李強首相に責任になすりつけようと考えているのだろう。 

 

今回の「中央経済工作会議」終了後、長文の経済対策を公表し、全国民が「中央経済工作会議」の精神を学び、深く理解するよう呼び掛けた。また、民営企業の発展のためにさらなる政策を打ち出し、それらを確実に実行することや、一層の外資の誘致不動産業の再構築などを強調した。 

 

同時に、「経済宣伝と世論の指導を強めて、中国経済の光明(明るい見通し)論を歌い、響かせよう」と要求している(中国政府網12月12日付)。つまり、経済問題の指摘や批判はやめろと言っているようなものだ。 

 

共産党内で渦巻く経済への不安 

 

その一方で、国務院傘下の新聞『経済日報』は12月17日、「中央経済工作会議の精神を貫徹せよ」との社説を掲載した。李強首相がこの新聞の最高責任者だ。 

 

この社説の全文を読むと、気になる箇所が目に入った。 

 

「成果が上がっているときこそ、薄い氷の上を歩くような慎重さを持ち、安全な時こそ悩みと危険に対する意識を持つべきた。(中略)『ブラックスワン』(事前にほとんど予想できず、起こったときの衝撃が大きい事象)を大いに警戒し、『灰色のサイ』(将来大きな問題を引き起こす可能性が高いにもかかわらず、現時点で軽視されがちな潜在的リスク)は常に避けるべきだ。地方の債務リスクを統一して管理し、(リスクを)無くすようにしながら発展しよう」 

 

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ブラックスワン」と「灰色のサイ」に言及した『経済日報』の社説は、今後の中国経済多くの問題と困難があると断言しているように読める。これは、「中央経済工作会議」の公式見解に反対の意見を唱えているではないだろうか? 言論が厳格に統制されている中国では異例の社説だ。 

 

李強首相は習主席の忠犬的な存在だが、責任をなすりつけられないよう逃げ道を残している」のではないだろうか。 

 

もう一つ見逃せない重要な動きがあった。12月13日、中国人民政治協商会議胡春華副主席が習主席の特使に任命され、16日にマダガスカルを訪問すると中国外交部は発表した。窓際族になっていた中国共産主義青年団派(団派)を代表する人物が、再び政治の表舞台にでてくる予兆なのだろうか? 要注目だ。 

 

https://gendai.media/articles/-/121226?page=3 

(来年に続く)