北京オリンピック(2/6)

(3)北京オリンピックボイコット

そこで、ついに人々が北京オリンピックボイコットに立ち上がった。その先鋒にたつのが、アメリカの有名女優「ミア・ファロー」である。

2007年3月28日、ウォールストリート・ジャーナルに「ジェノサイド五輪」と題する論文を投稿する。

これは「ダルフールの大虐殺」を阻止するために、北京五輪のボイコットを働きかけたものである。

それによると、

ダルフールでは、すでに40万人が殺され250万人が居住区から駆逐されたが、中国政府は、その実行者であるスーダン政府を全面支持してきた。』

その詳細説明として

[1] 中国政府は国有の中国石油を通じて、スーダンの石油の大部分を買い、ス
  ーダンの石油生産企業集団2つの最大株主となっている。

[2] スーダン政府は中国との石油取引からの収入の80%以上を、虐殺を実行
  するアラブ人の民兵組織
ジャンジャウィード用の兵器購入に当てている

[3] 民兵組織やスーダン政府軍が使う爆撃機、攻撃用ヘリ、装甲車、小火器
   などの兵器は、殆どが中国製である。

[4] 中国は米英両国が推進する国連平和維持軍のダルフール派遣に、一貫し
  て反対してき た。

更に、次のようにと論じた。

『中国政府は人権弾圧で、国際非難を浴びることには平然としているかもしれないが、北京五輪の開催だけは最重要視するので、そのボイコットの動きには最も敏感となるだろう』

2008年5月8日、米下院本会議にて、共和党の有力議員のアラン・ウルフ氏は、「ダルフール虐殺については、中国政府は『共犯』である」と非難して、北京オリンピックのボイコット運動への同調を表明する演説をした。

その際、上述のミア・ファローさんの北京五輪阻止論を紹介し、「中国政府の一つの世界、一つの夢と言うスローガンには、ダルフール虐殺と言う『一つの悪夢が存在する」

と述べている。

そしてその翌日、

2008年5月9日には、米下院議員108名が、中国・胡錦濤主席に書簡を送り、ダルフールでの虐殺を続ける勢力への支援を停止しない場合には、2008年の北京五輪「ジェノサイド五輪」(大虐殺五輪)となってしまうとして、北京五輪のボイコットにゆき着くと警告している。

この書簡には、下院外交委員長のトム・ラントス議員らによって署名されている。

なお、ミア・ファローさんの寄稿の4日後、2008年4月1日アメリカの著名な映画監督のスティーブン・スピルバーグ氏は、中国の胡錦濤主席に一通の手紙を送っている。

スピルバーグ氏は、北京五輪の芸術顧問を務めている。

そのためミア・ファローさんは先の寄稿論文で、ベルリンオリンピックの記録映画をナチスの宣伝に使った事例になぞらえて、スピルバーグを人権問題を軽視し、資源獲得を最優先する中国のプロパガンダに組することになると批判した。

そのためスピルバーグは、中国政府に、ダルフールの虐殺を終わらせるようにスーダン政府に働きかけるよう要請したもの思われる。

(続く)