カーボンゼロ、クルマの未来はどうなる?(97)

日本の自動車供給網、迫られる構造転換 

 

世界最大の自動車メーカーのトヨタ自動車が電気自動車(EV)を起点に生産改革に動き始めた。国内の部品や素材などのサプライヤーも構造転換を迫られる。
サプライチェーンは変わると深く認識している。部品会社とは議論し、最適解を見つけていきたい」。EVの専門組織「BEVファクトリー」プレジデントの加藤武郎氏はギガキャスト導入による部品会社への影響を問われて答えた。
日本の自動車メーカーはそれぞれが「ケイレツ」と呼ばれるサプライヤーを抱え、部品や素材を調達する。製法の刷新は調達戦略に直結する。
ギガキャストの採用でトヨタは177個の鋼板のプレス部品をわずか2個の部品に置き換える。ケイレツのプレス部品メーカーや多くの金型メーカーへの発注量が減るのは確実だ。 

 

「継承と進化」を掲げる佐藤社長は今後、EV起点の生産改革をやりきれるか(4月の新体制方針説明会、東京都千代田区    

 

素材メーカーにも影響が及ぶ。車の素材の中心が鉄からアルミに大きく変化するからだ。鉄鋼メーカー幹部も「自動車向けの鋼材使用量が減る可能性があり、採用動向を注視する」と警戒する。
車の分解調査会社の米ムンロ・アンド・アソシエイツによると、米テスラの「モデルY」の車体部品で使うアルミ量は全体の質量の半分近くになる。一般の乗用車のアルミ比率は1割程度だ。
 

日本メーカーは薄くて強度の大きな高張力鋼板(ハイテン)の技術に優れる。大量の鋼板をプレス成型して車体に用いてコスト競争力に優れた車両を開発してきた。EV車体の素材のアルミ比率が高まれば、日本の鉄鋼メーカーへの影響は大きい。
 

EVになると部品点数が3割程度減るといわれている。内燃機関や排気管、燃料供給装置、変速機など多数の部品が必要なくなる。
テスラや比亜迪(BYD)などEVメーカーはモジュール(複合部品)化に力を入れる。自動運転や通信機能など技術も高度になるなか、小規模な部品会社が受注できる余地は小さくなる。
 

欧米ではEV時代に備えてメガサプライヤーへの再編が進んできた。日本でも部品会社の再編による巨大化の流れが加速しそうだ。 

 

(矢尾隆行、清水直茂) 

 

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尾三四郎伊藤忠総研 上席主任研究員 

 

別の視点 

労働者の立場に立った説明が求められる。フォードはT型フォードの低価格化と一日5ドル(当時)という高賃金を実現させた。「フォーディズム」では、経営は金儲けや投機のためだけでなく、社会貢献のために合理化を追求するものであって、製品は消費者に求められるものでなければならず、消費の購買力の多くは労働者によるものだとした。従って、製品価格は安く、労働者の所得は高くなければならないとした。ギガキャストを導入する車種の製品価格はどれほど下がるのか。大幅に削減されたコストのうちどれほどが労働者に分配されるのだろうか。6万社といわれる下請けの雇用はどれほど減るのか。具体的な商品戦略の説明も求められる。 

2023年7月5日 6:34 (2023年7月5日 6:40更新) 

 

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC04CEA0U3A700C2000000/?n_cid=NMAIL007_20230705_A 

 

 

EVになると部品点数が3割程度減るといわれている。内燃機関や排気管、燃料供給装置、変速機など多数の部品が必要なくなる。」とある様に、EVともなれば、これらの部品は必要がない。 

 

ガソリンタンクから燃料パイプ、キャブレター、燃料噴射装置、排気管はもちろんのこと、肝心なエンジンそのものも必要が無くなる。と考えれば、第三次か四次の産業革命に匹敵するのかもしれないのだ。 

 

BEVになることで部品が3割も減り、そしてギガキャストなどと言う生産改革により更に部品が減り、鉄からアルミに素材も変わってゆくことになる。 

(続く)