ALPS処理水放出と習近平の凋落(55)

人民銀行は低コストの資金を市場に投入しているのだが、使い当てがない、という状況のようだ。これでは中国経済は浮かばれない。 

 

もっと早くから景気回復の手当てを真面目にやっていれば、まだ救い手があったと思われるのだが、習近平の独裁下ではそれもままならなかったようだ。 

 

習近平がやったのは、それとは正反対の「中国経済の未来は明るい」キャンペーンだった。 

 

これでは経済は浮かばれる筈はないのだが、「中央経済工作会議」に習近平が欠席したことは以前に述べた。 

 

虚偽のプロバガンダで、中国経済がよくなる筈はないだが。 

 

 

 

gendai.media/articles/-/120986 

習近平政権の経済危機対策の柱は「中国経済の未来は明るい」キャンペーンだ!~数字は捏造、懐疑的言論には秘密警察の取り締まり 

石 平 2023.12.22 

 

 

習近平、自信を失ったのか   

12月11日、12日の両日間中国共産党政権が年に一度の「中央経済工作会議」を開いた。毎年の年末に開かれる恒例の会議として、翌年の経済運営の方針を打ち出す重要会議として位置付けられているが、今年の場合、中国経済が崩壊最中の状況であるから、どのような「救命措置」が打ち出されるのかは当初ら大変注目された。 

 

by Gettyimages    

 

その中で、大きな注目を集めたのは、会議に対する習近平主席の姿勢である。会議開幕の11日、習主席は最高指導部メンバー全員を率いて出席し、恒例の「重要講話」を行なったが、12日の会議には完全に欠席したことは判明されている。 

 

12日、習主席はベトナムへの国事訪問を始めたわけだが、新華社通信の報道によると、彼がハノイに到着したのはその日の正午頃であるという。この到着時間から逆算すれば習主席が出発したのは12日の朝であるはず、2日目の「中央経済工作会議」を完全に欠席していることが分かる。 

 

2012年11月に習近平政権成立以来、毎年恒例の「中央経済工作会議」に習氏自身が途中から欠席するのは初めてのこと、最高指導者が中央の重要会議を途中欠席するのもやはり異例なことである。今回の場合、「ベトナム訪問出発のために会議を途中欠席」と解釈することもできようが、それなら習氏自身の一存で会議を1日早めに開くこともできるから、「ベトナム訪問」は途中欠席の必然な理由にならない。 

 

結局、習氏は、党総書記・中央財経委員会主任として中国経済運営の司令塔でありながら、会議が来年の政策方針・経済救済措置を最終的に打ち出す場面を意図的に回避することで、自らの責任回避を図ったのであろう。そしてそれはまた、習氏自身が来年の経済運営に自信を失っていることの証拠であると見て良い。 

 

当然、株価は下落 

 

最高指導者はこのようないい加減な姿勢であれば、民間と経済界は当然、「中央経済工作会議」の結果に完全に失望している。それは、会議閉幕翌日の13日の株市場の反応を見れば分かる。 

 

12日、上海総合指数は依然として3000ポイントの大台を維持していだか、13日、取引開始の時点からいきなり3000ポイントを割ってしまい、前日比34.68ポイント(1.15%)安の2968.76ポイントで取引を終える。同じ日の深圳市場でも、深圳総合指数は1.21%安となった。そして14日、15日の両日とも上海株が下がり続け、15日には2942.55ポイントの終値で今週の取引を終えた。 

 

来年の経済運営の方針を大々的に示したはずの中央経済工作会議はこのようにして、株市場には完全に見放されたのである。 

 

こうなったことの最大の理由は、「中央経済工作会議」が来年の経済運営の方針に関しては、空疎なスローガンの羅列や今までの常套文句を並べる以外に、内実の伴った政策措置はほとんど打ち出せなかったことにある。だからこそ習近平自身も途中欠席という異例な対応を取ったのだが、民間の反応はやはり失望の一色ある。 

(続く)